国内初、4D施工シミュレーションを用い無人で鉄骨架構を自動組み立てに成功
前田建設工業は、タダノ、千葉大学と共同で、茨城県取手市の新技術研究所「ICI総合センター ICIラボ」の屋外フィールドで、PC上の4D施工シミュレーションに連動してクレーンを自動運転し、鉄骨架構の梁(はり)および床スラブを無人で設置する実証試験を実施した。
前田建設工業は、PC上の4D施工シミュレーションに連動してクレーンを自動運転させる技術で、鉄骨架構の梁(はり)および床スラブを無人で設置する実証試験を行った。
ICIラボの屋外フィールドで、梁と床スラブの自動敷込みで検証
前田建設工業は、独自に製作した4D施工シミュレーションを用いて、移動式クレーンで国内最大シェアを占めるタダノ、千葉大学大学院工学研究科の平沢研究室と共同で、PC内で構築した建設機械の動きを実際のクレーンに通信で指示して、建機の“自動操作”を実現する研究を進めている。
試験体は、ICIラボの屋外フィールドに設置された1層、1×2スパンの実寸大鉄骨架構で、今回検証したのは梁と床スラブの自動敷込み。
クレーンの自動操作は、4D施工シミュレーションに従って、部材ヤード上にクレーンブームが旋回。フック近傍に取り付けたカメラから、部材に貼り付けた「部材記号」を、AIによる画像認識で識別して、自動フックがつり冶具を自動的につかむ。フックの荷重計により、重荷がかかっていることを確認して巻き上げ、架構の所定の位置まで移動。つり荷の回転は、ジャイロ機構を備えた遠隔操作で制御する。つり荷の位置は、カメラで測定され、クレーンの動きを補正する。
床スラブは、合成デッキスラブを用いた全断面コンクリートを打設したプレキャスト床板を工場で製作。従来は上下2段に必要だったスラブ配筋を上端の一段配筋とすることで、X、Yの2方向のスラブ筋があっても、床スラブを落とし込むだけで済み、その後の鉄筋工事は不要となる。
床スラブ同士の隙間は、高流動モルタルを流し込み一体化させる。梁、床スラブには、クレーンが部材を落とし込めば、所定の位置へ正確に設置される独自のガイド機構が取り付けられている。
今後、前田建設工業の自動施工とタダノのクレーン自動操縦に関して、それぞれの保有する技術を基に共同開発を進め、将来の建設自動施工の普及に貢献していくという。
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