人の動きや会話を感知して、壁や天井から光や音を発するDNPの「4次元空間演出」:JAPAN SHOP 2019
大日本印刷(DNP)は、「JAPAN SHOP 2019」で、室内の状況をセンサーで感知して、壁や天井からその場にふさわしい光や音を発する「次世代ステルス空間」を発表した。開発にあたっては、照明のグラデーション効果といったデザイン面で日建設計が協力をした。
DNPは、第48回 店舗総合見本市「JAPAN SHOP 2019」(「日経メッセ 街づくり・店づくり総合展」内、会期2019年3月5〜8日、東京ビッグサイト)で、その場の雰囲気に合わせた照明や音響などを提供する「ステルス空間」のプロトタイプを展示した。
その場の状況を感知し、最適な光や音を演出
次世代ステルス空間は、DNPと日建設計が開発したフルカラーLED照明一体形壁装材と、村田製作所の会議空間のコミュニケーション状況を可視化するセンシング技術「NAONA」を融合させた空間演出のシステム。
人の五感が受ける光や音などを照明やスピーカーといった目に見える従来の機器ではなく、壁や天井の中に内包させて隠れた場所(ステルス)から演出する。空間内には村田製作所のセンシングデータプラットフォーム「NAONA」を設置し、人の動きや声のトーン、温湿度、二酸化炭素など、変化する室内状況をモニタリングして、機器と一体化した壁や天井が、場の状況に応じて光の色や明るさ、音の内容などを最適化する。
ブースで、DNP専務執行役員の山口正登氏は、「当社はこれまで生活者のための空間設計を展開してきた。次世代ステルス空間は、従来のインテリア、エクステリアといった3次元に加え、時間とともに変わる空間の動的変化を読み取り、最適な空間を創造する4次元での空間設計の新たな提供だ」と説明した。
DNPすまいみらい研究所所長の北村謙治氏によれば、空間を演出する構成要素の一つ、照明は、壁面上部に仕込まれ、その色や明るさには「建材の世界で今注目されているヒトを中心に考えられた照明“ヒューマンセントリックライティング”を採り入れている」という。ヒューマンセントリックライティングは、照明の変化によって集中力を高める効果をはじめ、病院などでは、自然治癒力を向上させるといった、今までにない明かりの在り方を追求する概念。
実演デモでは、ブース内を会議室と仮定。リラックスが必要なケースでは「桜色」、対話が少なくコミュニケーションを活発化させたいときは「緑色」、話をまとめる際には「青色」と照明、およびそれに合わせた鳥のさえずりや自然音を流すことで、空間演出というアプローチでの“働き方改革”を提案した。
なお、音響装置は、TOAと共同開発した壁全体がスピーカーの役割を果たす特殊な壁装材を使用。振動によって面全体から音を発するパネル型の部材で、パネルを上下左右に組み合わせることができる。表面デザインは、木目調やメタル調など、DNPの内装化粧シート180種類から選ぶことが可能だ。
北村氏は「機器と空間が一体化されているからこそ、強制ではない、人の自然行動を促すことが実現する。まさにファシリテーター要らず。会議室だけでなく、滞在時間の長期化や逆に回転率を上げたい店舗などでの導入も見込める。今後は、センシングで、位置情報や生体データなども取得して、香りも含めた空間創造の開発も視野に入れている」と語った。
ブースで示されたのはプロトタイプで、DNPではまだ人がコントローラーを操作して制御デバイスに信号を送っている「ステージ1」の段階と位置付けている。次のステップでは、室内の画像や発話をセンサーで取得して、ロジックプログラムによる自動化を想定。その先にバイタル、CO2濃度、行動などを複数デバイスで読み取り、AIで解析した空間にフィードバックする仕組みづくりまでを開発のロードマップとして示した。
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