脱枠前にコンクリートの必要強度を“超音波”で推定するシステム、ひび割れや欠けなどの発生を防ぐ:山岳トンネル工事
飛島建設は、大栄工機、エフティーエスと共同で、山岳トンネルの覆工コンクリート施工を対象に、脱枠前にコンクリートが必要な強度を発現していることを確認する超音波方式の脱枠強度管理システム「パルストメーター」を開発した。
飛島建設と、大栄工機、エフティーエスは、山岳トンネルの覆工コンクリート施工で、脱枠前にコンクリートが必要な強度を発現していることを確認する超音波方式の脱枠強度管理システム「パルストメーター」を開発した。
覆工コンクリート型枠にセンサーを設置し、超音波を送受信して測定
パルストメーターは、覆工コンクリート型枠(セントル)の一部としてセンサーを設置して、実際に打込まれたコンクリートに対して超音波の送受信を行う。覆工コンクリートを伝わる超音波の振幅(最大振幅)から、その時点のコンクリート強度を推定するシステム。
脱枠時に必要な強度の発現を実際に打込まれた覆工コンクリートで確認する方法としては、積算温度方式による強度の推定が行われている。積算温度方式は、コンクリートの強度を材齢と養生温度の関数として表現する考え方に基づくもので、覆工コンクリートの原位置で測定した養生温度を管理して、あらかじめ行う試験練りで準備した加水時点からの積算温度との関係式を利用して、覆工コンクリートの圧縮強度を推定する。
積算温度方式で、精度よく圧縮強度を推測するためには、覆工コンクリートに対する養生温度を測定し続けなければならない。そのため、加水時点以外で測定を始める場合や停電などの不測の事態で計測が中断した際は、積算温度の算出に適切な補正をしなければならない。
今回、開発した超音波方式の脱枠強度管理システムは、測定箇所のコンクリートの状態そのものから強度を推定するため、継続して測定する必要性はなくなる。脱枠する直前に測定するだけで、必要な強度の発現を確認することが可能になった。
実際の適用では、既に数カ所の現場で検証を実施。岩手県が発注した「一般国道107号(仮称)梁川トンネル築造工事」では、長さ1022m(メートル)のトンネル工でパルストメーターを適用した。
現場では一般的な工程として実施される試験練りで、工事で使うコンクリートに対する最大振幅とコンクリートの圧縮強度の関係を取得。次に、セントルにセンサーを設置して、試験運用した。
試験練り測定に使用する型枠は、セントルと同じ鋼材で製作し、さらにセンサーとともに、試験練り測定で使用したケーブルもセントルへ移設。試験練り測定をセントルで再現し、強度の推定精度を確保した。測定された最大振幅から強度を推定するための管理用PCも、セントル内に配備し、オンデマンドで強度を確認した。
結果として、2017年10月〜2018年3月の期間、全部で22ブロックの覆工コンクリートの測定データを取得。同工事の覆工コンクリートは、事前のフレーム解析による検討で、脱枠に必要な強度は1.1N/mm2(ニュートン毎平方ミリメートル)とされた。全てのデータで、脱枠に必要な強度1.1N/mm2を十分に超えてから脱枠されたことが確認されたという。
また、パルストメーターは任意の時点の振幅を測定し、強度を推定するため、連続して測定する必要がなく、脱枠作業に取り掛かる前に、所定の強度に到達しているかを確認すれば済む。実際に、全ての測定結果で、午前8時頃に推定された強度は、所定の強度を十分に超え、この時点の測定のみで脱枠の可否を判断することが実現した。
飛島建設では、今回開発した「パルストメーターは、山岳トンネルの覆工コンクリートの施工と同様に、型枠を前進させ、構造物を連続的に構築していくコンクリートの連続打設工法(スリップフォーム工法や橋梁(きょうりょう)の張出し架設工法など)にも活用できる」として適用を検討している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 建設現場でEC決済を可能にするDSシステム、現場管理や安全教育のサービスも提供
飛島建設とWill Smartは、建設現場向けのデジタルサイネージシステム(DS)を共同開発した。このシステムにより、建設現場でのEC決済や入退場記録、健康管理、安全教育コンテンツの配信などを行い、過去にない建設現場支援サービスとして建設現場の働き方改革、生産性向上を図っていく。 - 飛島建設ら3社が“木材活用”の地盤補強工法で、日本建築センターの評定を初取得
飛島建設、住友林業、ミサワホームの3社が共同開発を進める「丸太打設軟弱地盤対策&カーボンストック工法(LP-SoC工法)」が2019年度にも実用化されそうだ。同工法は、自然の丸太を地中に打設することにより、軟弱地盤の補強と炭素の貯蔵を同時に施すもので、地球環境対策や国産材の利用拡大につながると期待される。 - 埋戻材に軽量土を用いて阪神高速本線“函体”の合理化施工を実現、現場に製造プラント設置
鹿島建設は、阪神高速のトンネル工事で、高速道路本線函体上部の埋戻材に、軽量なHGS気泡混合土(HGS:High Grade Soil)を採用した。本線函体の頂版・底版の部材厚を薄くすることが可能となり、一般的な埋戻し土を使用した場合に比べ、15%の工期短縮、20%のコスト縮減が実現する。 - 宅配ロッカーに非常食の自販機能?飛島建設が東武鉄道の賃貸マンションで設計・施工・サービス一貫でサポート
飛島建設は、2019年1月に着工した東武鉄道の賃貸マンション「Solaie I'll(ソライエアイル)練馬北町」で、ローリングストック(非常食の循環)システム付き宅配ロッカー「イーパルボックス」を民間住宅で初導入することを公表した。