前田建設が建設資機材を自動搬送するAGVロボを開発、エレベーターと相互通信して目的階まで運搬:ロボット
前田建設工業は、高知工科大学、サット・システムズと共同で、建設資機材を自動搬送するロボットシステムを開発した。エレベータと相互通信して、複数階への移動も可能にし、煩雑な現場でも自動で認識して荷取りを行うという。
前田建設工業は、高知工科大学、サット・システムズと共同で、建設資機材を自動搬送する「AGV(Automatic Guided Vehicle)システム」を開発した。
同社では、創立100周年の主要施策として、多様なパートナーとの協創により、革新的技術や新ビジネスの実現を目指す場となることを目指し、茨城県取手市に新技術研究所「ICI総合センター ICIラボ」を2019年2月15日に開設。同センターでは、オープンイノベーションによる技術開発を推進しており、3者による協創事業として開発を進めてきたという。
作業所の環境が変化しても“目印”を置き換えるだけ
建設作業所の作業では、重労働かつ単純作業である「資機材搬送」の自動化(無人化)はニーズが高い。自動搬送技術のAGVは、工場内や物流倉庫など、他業界では既に実用化されてはいるものの、作業所環境が日々変化することや資機材の荷姿が多様であるため、そのまま建設現場へ適用することは難しいとされている。
今回、3者が開発した自動搬送システムは、主に建築作業所での“屋内搬送”向け。AGVロボットは、まず現場内に設置した簡単な目印を頼りに、下層階の荷取場で荷取りした資機材をエレベーターに自動で積み込む。エレベーターは自動で昇降し、目的階に着くとAGVがエレベーターから自動で資機材を荷取りして、荷置場まで安全に自律搬送するまでが一連の流れ。AGVとエレベーターは、互いに通信しながら連携して動作する仕組みだ。
このAGVシステムでは、作業所の環境が日々変化しても、目印を置き換えるだけで済み、AGVが自ら判断することで、煩雑な設定作業を一切行う必要がない。
また、資機材が集積場に整然と並べられていなくても、自動で認識して荷取りできる機能や荷置場の空きスペースを判断して所定の場所に荷置きできる機能も搭載している。安全面では、静的および動的障害物に対する自動回避機能や遠隔での緊急停止機能を備えている。
AGVシステムは、1t(トン)平台車とキャスター付きメッシュパレットに積載された建設資機材を対象とし、2019年4月には、都内の建築作業所での適用が予定されている。今後は、長尺物や重量物の搬送も実現できるように改良を重ねていくとしている。
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