OKIと前田建設がRC橋モニタリング技術を開発、50年の“ライフサイクル”を1種類の計測器で検知:検査・維持管理
沖電気工業(OKI)と前田建設工業は、OKI独自の光ファイバーセンシング技術「SDH-BOTDR方式」の計測高速化で、ワンストップで鉄筋コンクリート橋梁(きょうりょう)のライフサイクル全般にわたり、適用することが可能なモニタリング技術を開発した。両社はこの技術を用いた実環境での実証実験を2019年上期中に開始する。
OKIと前田建設工業は、OKI独自の光ファイバーセンシング技術「SDH-BOTDR方式」の計測高速化で、ワンストップで鉄筋コンクリート橋梁(きょうりょう)の50年もの長期にわたるライフサイクル全般で、適用することが可能なモニタリング技術を開発した。実用化となれば、橋梁の劣化予測精度が格段に上がり、最適なタイミングで修繕工事を実施することで、維持・管理コストの低減が期待される。
独自の光ファイバーセンシング技術で高い計測精度を維持
鉄筋コンクリート橋梁のモニタリングでは、ひび割れ発生箇所の検知、剛性低下や時間とともに変形が増大する“クリープ”による振動状態やたわみ量の把握などが求められる。だが、経年劣化の過程では、それぞれの劣化要因で着目すべき指標が異なるため、1種類のモニタリング技術では全ての指標に対応することができず、それぞれに適したモニタリング技術を選定・適用する必要があった。
これに対し、前田建設は独自のノウハウをもとに、モニタリングシステムを組み込んだインフラ運営のフローを設計。OKIは、特許取得済みの光ファイバーセンシング技術を用いて、高い計測精度を維持しつつ、高頻度なデータ取得を実現した。
従来からある「BOTDR方式」は、光ファイバーに光パルスが入射したときに発生する後方散乱光の1つである「ブリルアン散乱光」の周波数が、温度やゆがみに比例して変化する特性を利用した光ファイバーセンシング手法。
OKIが独自に開発した「SDH-BOTDR(Self Delayed Heterodyne -BOTDR:自己遅延ヘテロダインBOTDR)」は、ブリルアン散乱光の周波数の変化を電気信号の位相シフトに変換して捉えることで、測定時間を大幅に短縮した新たな光ファイバーセンシング手法。
この手法では、BOTDR方式では数十分を要していた測定を1秒以内に短縮。そのため、光ファイバーをセンシングデバイスとして活用するメリットを損なわず、広い範囲をカバーした温度・ゆがみのリアルタイム測定を可能にする。また、内蔵している測定ソフトウェアは、現場での時間や距離において温度・ゆがみの変化の可視化、センサーの測定範囲、測定結果に応じた設定変更ができるという。
新モニタリング技術により、インフラのライフサイクルのなかで発生するさまざまな種類の劣化に対するモニタリングで、一般的にインフラの耐用年数とされる50年ほどの長期にわたる観測を1種類の計測器だけで行えるようになり、トータルコストの低減につながる。
現在、前田建設の保有する実験施設で、接着材料の促進耐候性試験により、橋梁への長期的な接着性能を確認しつつ、光ファイバーを設置した鉄筋コンクリート試験体に対する疲労載荷試験で、鉄筋コンクリートの挙動に対する計測性能の検証も行っている。
この検証結果を踏まえ、2019年度には、供用路線の実橋に光ファイバーを設置し、実環境でのデータ取得を始めるという。
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