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日本の林をテストフィールドに4社連携の「無人架線集材システム」、宇宙へ建機遠隔操作(2/2 ページ)

熊谷組、住友林業、光洋機械産業、加藤製作所の4社グループは2019年1月30日、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)と林業機械システムの月面での運用に向けた共同研究契約を締結したと発表した。各社の技術を活用し、無人化された「架線集材システム」を開発する。当面は、国内林業での適用を見込み、将来的には宇宙探査への応用を目指す。一見、異次元的にも見える連携の背景には、林業と月面探査、そして建設業をも悩ませる共通の課題が存在した。

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林業と建設業の人材不足・低生産性の共通課題を解決

 月面は、地上に比べ複雑な地形が多く、機器の正常な動作に悪影響を及ぼすほど、熱環境も過酷とされる。架線集材システムであれば、無人化・自動化により、作業員の安全性は守られる。加えて、運搬機構の動力源を固定できるため、機器に与える熱の影響を制御しやすく、化石燃料を使用しないメリットもある。なによりも、繰り返し行う吊り荷の移動作業は、一度システムを設置してしまえば済むのが最大の利点だ。


月面作業のイメージ

 今回、林業における同技術の実用化と、月面探査への応用に向けた研究開発が並行した背景には、双方に共通する課題があった。

 日本の森林は、戦後に植林された人工林が多く、既に伐採期を迎えている。山林を保全するためには、間伐などの森林整備を適切に行い、木材の循環利用を図らなければならない。

 しかし、日本の林業では、造林や森林の保育、伐採などの集約化が進んでおらず、森林保全に必要な道路網の整備も十分とはいえないのが現状。効率的な作業システムの導入・運用の立ち遅れも目立つなど、要するに生産性が低いといわれている。さらに、林業従事者の高齢化や人手不足も問題視されている。

 同様に建設業でも、低い生産性や人手不足がボトルネックとして指摘されており、克服する方策として、ICTを活用したさまざまな技術開発が進められているのは周知のことだろう。

 人が少ない、あるいは、足りない中で、安全性と効率性を追求し、生産性を上げる――。林業と建設業がともに抱える難題が、極限的な状況下で作業を進める月面探査のテーマと一致した。地球上と異なる特殊な月面環境では、省力化が作業の質と作業員の安全性を高めることにつながる。林業、建設業、月面探査をつなげるキーワードは「省力化」だ。

 月面基地が設営され、人類がそこを拠点に定点活動を行うことになれば、「固定式の広域運搬システムは、利点が大きい」(熊谷組)という。日本の林地を実験場として、建設、製造、そして林業のコラボレーションが、宇宙探査に通用する技術を担う日も近いかもしれない。

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