全国で増える廃校を学びの場にコンバージョン、前田建設が100周年事業で人材開発センターを取手に開設:大規模木造建築
前田建設工業は、廃校を利活用して人材育成・深耕の場「ICI人材開発センター」を建設する。2019年秋のオープンを目指し、このほど着工した。設計には、マウントフジアーキテクツスタジオ一級建築士事務所やプレイスメディアを招聘し、木造大スパンなどを採り入れた新しい大規模木造建築の形態を表現する。
前田建設工業は、「CSV-SS(Creating Satisfactory Value Shared by Stakeholders、前田版CSV)」の実践を担う新たな茨城県取手市の施設「ICI総合センター」内に、「人材育成・深耕の場」としての拠点「ICI人材開発センター」の設置を決めた。
未利用の公共施設を民間の企画力で再生するプロジェクト
ICI総合センターは、前田建設工業の創立100周年を記念し、次の100年に向けたさらなる成長を目標に据え、「ICIラボ」と、隣り合う「ICI人材開発センター」の2施設を整備する。2018年12月に先行して開設したICIラボは、ベンチャー企業・社会・経済を融合した知のネットワークを核として新たな価値創造を図る拠点となる。
今回、建設に着手したICI人材開発センターは、地元自治体・大学・企業・住民など文化・芸術を加えたネットワークを構築して、新たな価値創造に寄与できる人材育成の場とする。
ICI人材開発センターの建設地は、2016年3月に閉校した取手市立「白山西小学校」の跡地。旧校舎を改修する「宿泊棟」と、木材および鉄骨のハイブリッド構造で新築する「セミナー棟」で構成。
計画では旧校舎(RC造4階、3階)の耐震改修工事を行い、170人の宿泊とワークショップが可能な「宿泊棟」へコンバージョンする。宿泊棟に隣接して新築する「セミナー棟」(木+S混構造、2階)は、大スパンの空間の下に200人を収容するセミナー室と食堂機能を配し、大規模木造建築の新しい形態とする。敷地面積は25万5000m2(平方メートル)で、総延べ床面積は5400m2。
少子高齢化と人口減の中、高度経済成長期に建設された小・中学校の閉鎖や廃校は、全国で深刻な問題となっている。新しいICI人材開発センターは、未活用の公共施設を民間の企画力と実践力で再生させるモデルプロジェクトになることを目標としている。
意匠設計は、斬新な木造建築で評価の高い建築家・原田真宏氏と原田麻魚氏が主宰するマウントフジアーキテクツスタジオ一級建築士事務所が手掛ける。ランドスケープ設計は、国内外に豊富な実績を持つプレイスメディアが担当。前田建設工業の設計部も含めた3社がコラボレーションすることで、地域に調和した学びのプラットフォームにふさわしい施設を創出する。
ICI人材開発センターでは、前田グループと協力会社の研修やオープンイノベーションのパートナーたちとの交流を行う他、災害時には地域の防災拠点にもなる。
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