長期時系列データから見る「建設技術者を取り巻く雇用環境の変化」、人材不足はかつてない次元に:建設業の人材動向レポート(5)
本連載では、ヒューマンタッチ総研が独自に調査した建設業における人材動向をレポートする。今回は、建設技術者を取り巻く、雇用環境の変化についてまとめた。
本稿では、ヒューマンタッチ総研が独自に調査した建設技術者を取り巻く、雇用環境の変化のレポートを紹介する。
■「建築・設計・測量技術者」の人材不足は今までに経験したことのない次元に
公共職業安定所(ハローワーク)における、専門的・技術的職業に分類される12の職業の有効求人倍率の推移を長期時系列に見ると図表1となる。
専門的・技術的職業では、長年にわたり「医師、歯科医師、獣医師、薬剤師」の有効求人倍率が最も高い状況が続いていたが、「建築・設計・測量技術者」の有効求人倍率が他の職業を大幅に上回る勢いで上昇を続けた結果、2018年7月にはついに「医師、歯科医師、獣医師、薬剤師」を追い越して6.06倍に達した。
その後も、「建築・設計・測量技術者」の有効求人倍率は上昇を続け、同年11月には、現在の職業分類になった2012年3月以降で最大の6.78倍に達している。
■建設技術者への不足感も急激に高まる
このように、今までに経験したことのないほど人材確保が困難な状況の中、建設業各社における建設技術者の不足感も高まっている。
厚生労働省の「労働経済動向調査」より四半期ごとの建設技術者の過不足判断DIを長期時系列に見るとこの図表2のようになる。リーマンショックの影響が色濃い2009年5月調査ではマイナス2ポイントであったが、2012年以降は基本的に上昇傾向が続き、2018年の11月調査では68ポイントにまで上昇しており、建設業各社では建設技術者への不足感が非常に高まっていることが分かる。
*過不足判断DI(Diffusion Index)⇒「不足」と答えた企業の比率から「過剰」と答えた比率を引いた数値
■建設投資は回復基調にあるが建設業の就業者数は横ばいで推移
次に、建設投資と建設業での就業者数の推移を長期時系列に見ると図表3となる。
建設投資は2000年度には66兆1948億円に達していたが、その後は減少傾向が続き2010年度には41兆9282億円にまで落ち込んだ。
その後、東日本大震災の復興需要や東京オリンピック・パラリンピックの需要もあり上昇傾向が続き、2018年度には57兆1700億円にまで回復している。
建設業の就業者数は2000年度には653万人に達していたが、その後、建設投資の減少に比例して就業者も減っていき、2011年度には497万人にまで減少した。
その後、建設投資は回復に向かったが、厳しい人手不足を背景に就業者数は伸び悩み、ほぼ横ばいで推移している。
これらのデータから分かるように、「建築・設計・測量技術者」の人材不足は今までに経験したことのない次元に達しており、建設業界、建設業各社においては、人材確保に向けてさまざまな対策を早急に打っていくことが重要な課題になると考えられる。
著者Profile
ヒューマンタッチ総研(所長:高本和幸)
ヒューマンタッチ総研は、ヒューマンホールディングスの事業子会社で、人材紹介事業を行うヒューマンタッチが運営する建設業界に特化した人材動向/市場動向/未来予測などの調査・分析を行うシンクタンク。独自調査レポートやマンスリーレポート、建設ICTの最新ソリューションを紹介するセミナーなど、建設業界に関わるさまざまな情報発信を行っている。
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