連続して到来する津波の波面検知・水位推定するレーダー観測、沿岸部の防災・減災を支援:防災・減災
三菱電機は、海表面の流速を測るレーダー観測で、連続して到来する津波の波面検知と、従来より正確な水位推定を実現する「レーダーによる津波多波面検出技術」を新たに開発した。
三菱電機は、2015年に発表した「レーダーによる津波監視支援技術」を高度化し、「レーダーによる津波多波面検出技術」を新開発した。新技術は、海表面の流速のレーダー観測で、連続して到来する津波の波面検知と、従来手法よりも正確な水位推定が可能になる。
海表面の流速から、連続して到来する津波の進行方向(波面)を検出
新技術は、津波の規模を早期かつ正確に検知して、迅速な避難計画の策定を支援することで、沿岸地域の防災・減災に貢献する。今後は、2025年の実用化を目指し、大学機関と連携しつつ開発を進めるとしている。
津波の流速情報と推定水位情報は、従来手法でも見える化はできていたが、新たに津波の進行方向を把握し、これをベースとすることで、水位をより正確に推定することが実現する。
三菱電機は、2011年3月11日に発生した東日本大震災をきっかけに、津波の到来を早期に捉えるための検討をスタート。2015年には、「レーダーによる津波監視支援技術」を開発した。今回、この技術を高度化し、津波成分の見える化に加えて、連続して到来する津波の波面検知と、より正確な水位推定ができる「津波多波面検出技術」を開発した。
従来の「レーダーによる津波監視支援技術」は、海洋レーダーで用いる短波帯電波が海表面に沿って伝搬する性質を利用し、地球の曲率により見通し外となる20km(キロ)以遠の領域で海表面の流速を観測。その中から、定常流を除去することで早期に津波成分を抽出していた。
新技術では、流速が大きい領域が波面となる津波の性質に着目。抽出した津波成分から、津波の波面候補を複数推定し、独自のアルゴリズムで複数候補の中から、連続して到来する津波の波面を特定することで、進行方向の検出が可能になった。
これにより、より正確な津波情報の提供が可能になり、到達時間や被害規模の推定ができるようになる。誤検出率は、0.1%以下までに低減されたという。
また、津波の到来波面を検出することで、進行方向を考慮した津波の方程式(浅水長波理論)の適用が可能となり、従来は1m(メートル)以上あった津波の水位推定誤差を50cm(センチ)以内にまで抑える。
新技術により、今まで以上に、津波の規模を確実につかめるようになり、迅速な避難計画の策定にも役立つ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 高知県の中土佐町、新庁舎建設のプロポーザルをBIMで実施
高知県の中土佐町は新庁舎建設における基本設計業務の実施事業者の選定を、BIMを利用した公募型プロポーザル方式で実施する。 - Google Earthを活用したコンパクトシティー実現のための画期的ツール
福岡県、国立研究開発法人建築研究所、日本都市計画学会都市構造評価特別委員会、都市の姿をさまざまな角度からGoogle Earthで見ることができるウェブサイト「都市構造可視化」を公開している。近年、多くの自治体が人口減少時代でも持続可能な都市構造を構築するため、地域に即した都市の状況を分析する試みを行っている。2018年6月30日に設立されたコンパクトなまちづくり推進協議会で、自治体関係者向けにデモンストレーションが行われた。 - 建物の浸水リスクを可視化、BIMで解析時間を超短縮
大成建設は豪雨や洪水などによる建物内部の浸水リスクを可視化できる評価・診断システムを開発した。BIM(Building Information Modeling)データを活用することで、従来より大幅に解析時間を短縮できるようになったのが特徴だ。 - 熊本地震の橋梁被災を踏まえ、NEXCO中日本が耐震補強設計の早期実現に向け「基本契約方式」導入
NEXCO中日本は、熊本地震を受け、2017年度から橋梁の耐震補強工事を進めているが、入札不調などが多いため、耐震補強の設計業務を円滑に実施するために「基本契約方式」を導入した。