あらゆる“シールドトンネル”の「坑内測量」を高い精度で自動化、大林組
大林組は、シールド工法によるトンネル工事を自動化する「大林インテリジェントシールド(OGENTS)」の開発を進める。第一弾として、坑内基準点・水準点・セグメント・マシン測量の全てに対応するシールド坑内自動測量システム「OGENTS/SURVEY」を発表した。タブレット端末による遠隔操作で測量可能とし、作業時間を3割短縮するなど、一層の生産性向上と技能労働者不足への対応が図られている。
大林組は2019年1月17日、シールド坑内自動測量システム「OGENTS/SURVEY(オージェンツ/サーベイ)」を演算工房と共同開発したことを明らかにした。
2020年までに要素技術、2021年にメインシステム完成を目指す
これは、大林組が取り組むシールド自動化システム「大林インテリジェントシールド(OGENTS)」の一環で、さまざまなシールドトンネル工事の現場で適用可能とし、国土交通省が推進する「i-Construction」の具体化技術として実用化を目指す。
「大林インテリジェントシールド」のシステム開発では、シールド工事にかかわる作業を6つの分野に大別。それぞれ個別の要素技術と、それらを統合するメインシステムの開発を並行して進める。今後、2020年までに要素技術、21年までにメインシステムを完成させる計画だ。
この第一弾として、6つの分野の1つであるシールド自動測量について、シールド坑内自動測量システム「OGENTS/SURVEY」を開発した。同システムはシールド工事で必要となる坑内基準点・水準点・セグメント・マシンの全4測量をオート化。自動視準トータルステーション(TS)をタブレット端末で遠隔操作するだけで、他機器を用いることなく自動で測量できる。
これにより、視準作業を行うための計測者と補助者が不要になる。狭あいな空間で測量機器を中腰になってのぞき込むようなことも無くなり、計測者の身体的負担を削減する。
また、1台のトータルステーションで全4つの測量を自動で行い、その結果はシールド掘進管理システムに送信される。現地での記録や入力作業が省略できることから、ヒューマンエラーを防止するとともに、測量時間も3割短縮。測量作業が長引くことによる掘進工程への影響も低減する。
さらに、精度の低下を瞬時に検知する自己診断機能を導入。現地の振動や衝撃などに影響されることがない。自動で機器較正を行うセルフキャリブレーション機能も併用することで、高い精度を維持できる。
同社では、OGENTS/SURVEYの活用により、生産性の向上と技能労働者不足に対応し、長距離化が進むシールド工事で高い精度の確保と高速施工に寄与したいとしている。
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