コンクリートの型枠不要で自由な形状の建設用部材を生み出す3Dプリンタ、前田建設工業:3Dプリンタ
前田建設工業は、コンクリート用の3Dプリンタと専用のセメント系材料を開発。建設用部材を自由な形状に造形可能とした。コンクリートの型枠組みや打設などで人手が不要となり、大幅な省人化が図れる。1月下旬から協創パートナーを公募し、迅速な実用化を目指す。
前田建設工業は2019年1月16日、コンクリート用の3次元(3D)プリンタと、専用のセメント系材料を開発したと発表した。このセメント系材料をポンプで押し出しながら積層させることで、自由な形状の建設用部材を高精度に造形できる。実用化に向け、最先端技術を持つベンチャー企業や大学など「協創パートナー」を公募する。
造形範囲は、幅2000×長さ2000×高さ3000mm
従来、3Dプリンタは、プラスチックやセラミック、メタル合金、紙などを材料(マテリアル)としてきた。
ここ最近は、セメント系材料をポンプで押し出しながら造形機械で積層、構造物の部材などを造形する技術が進み、住宅や橋梁(きょうりょう)などの構造別に適用した事例が海外で報告されている。
同社では、このコンクリート積層造形技術の研究開発に数年前より着手し、室内用のコンクリート3Dプリンタ(門型)を製作し、セメント系材料の開発に取り組んできた。
この研究により、適度な粘性があり、圧送性や造形性に優れ、圧送後も形状を保持して自立し、積層による自重でも変形しないセメント系材料を生み出すことに成功している。同材料で、さまざまな形状の造形物も作成し、材料表面の状態も良好な美観に仕上がることを確認した。
これらの過程を経て、実施工用のロボットアーム型によるコンクリート3Dプリンタを製作し、2018年12月3日にオープンした新技術研究所「ICI総合センター ICIラボ」に導入した。
このプリンタの造形範囲は、幅2000×長さ2000×高さ3000mm(ミリ)となっている。コンクリートの型枠無しで自由な形状の部材をつくれ、型枠組みや打設などで人手が不要となり、大幅な省人化を図ることができる。これにより、労働力不足という社会的課題の解決をはじめ、安全確保や工期短縮、廃材削減にも寄与するとしている。
今後は、3Dプリンタの制御や測位技術、造形物の出来形確認、材料の改良、人工知能(AI)の導入などに取り組み、さらなる自動施工化を目指す。これに加え、鉄筋または鉄筋代替材料の造形技術についても研究を進める。
これらに関する最先端技術を持つベンチャー企業や大学、企業など、開発スピードを加速させるための協創パートナーを2019年1月下旬から募集する。オープンイノベーションにより、迅速な社会実装を目指す構えだ。
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