建設現場で発生する“フッ素”を吸着させる簡易施工のマットを開発
錢高組は、JFEミネラルと共同で、「フッ素対応の重金属吸着マット」を開発した。既に暴露試験を行い、その有効性を確認している。新開発の重金属吸着マットは、国内の建設現場で発生する土に含まれた自然由来のフッ素などを吸着させて、振り分ける技術。安価かつ簡単な設置で、合理的な重金属の処理が可能になる。
錢高組は、JFEミネラルと共同で、「フッ素対応の重金属吸着マット」を開発した。既に暴露試験を行い、その有効性を確認している。
吸着剤と土を混ぜる“吸着層工法”のプレキャスト版
開発の背景には、日本列島はヒ素や鉛・フッ素などの重金属などを多く含む岩石や土壌が広く分布していることがある。都市圏の大規模開発や道路建設、鉄道建設におけるトンネル工事などでは、大量に発生する自然由来の重金属を含む建設発生土に対し、より合理的な処理方法が求められている。
新開発の重金属吸着マットは、現地で重機によって、吸着剤と土を混ぜ合わせて吸着層を作る“吸着層工法”のプレキャスト版といえるもの。吸着剤の均質性と、人の手で敷設可能な施工性に優れているため、確実性が高く、設置費用も安価に抑えることが可能だ。
今回、新たに「フッ素」について吸着性能の高い鉄系吸着材を使用したマットを開発し、盛土暴露試験によって有効性の確認を行った。
実証実験の盛土暴露は、自然降雨による屋外での暴露のもとで評価するため、実際の工事現場で発生したフッ素を含むトンネル掘削ズリを用いて試験盛土を作製した。重金属吸着マット(1×2m)を2枚、4m2(平方メートル)敷設して、その上部にふっ素を含むズリを用いた盛土を構築。マットを敷かない盛土(ブランク盛土)と比較して吸着効果を確認した。
2017年11月〜2018年10月の約1年間のモニタリングでは、全ての試験盛土でいずれも、フッ素用吸着マットを通過した時の浸出濃度は、「地下水環境基準」に従うと、ブランクの浸出濃度よりも10分の1程度低い値で、十分な吸着効果があることが検証された。
錢高組では、当面は、掘り出されたフッ素を含有する“ズリ”やフッ素汚染土壌の仮置きシートとしての適用を考えている。将来的には、従来の2重遮水工法に代わる安価な封じ込め工法として普及させることを視野に入れ、今後も検証していく。
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