総工費の6割を占めるダムのコンクリ打設工事を“完全自動化”、施工管理者は打設計画を入力するだけ!:コンクリート打設
清水建設は、軌索式ケーブルクレーンを利用するダムコンクリートの打設工事で、コンクリートの製造から運搬・打設に至る一連の作業を完全自動化する「ダムコンクリート自動打設システム」を開発した。2019年3月から実際のダム建設工事で本格的に運用を開始する。
清水建設は、軌索式ケーブルクレーンを利用するダムコンクリートの打設工事を対象に、コンクリートの製造から運搬・打設に至る一連の作業を完全自動化した「ダムコンクリート自動打設システム」を開発した。
軌索式ケーブルクレーンは、レールの代わりにロープ(軌索)をレールとして利用するクレーンで、両岸に渡す主ケーブルの片端か両端に、走行ケーブルを張り、主ケーブル上を走行する「横行トロリー」と、走行ケーブル上を移動する「走行トロリー」の位置を調整することで、ケーブル固定点を結ぶ平面上の任意の場所にコンクリートバケットを移動させることができる。
コンクリート製造設備への材料供給もシステムが自動管理
ダム堤体のコンクリート打設工事は、コンクリートの製造・運搬・打設の繰り返し作業で、総工費の約6割を占める。この繰り返し作業を自動化すれば、大幅な生産性の向上につながることが見込める。
開発した自動打設システムは、施工管理者が事前に作成した打設計画を入力するだけで、所定の打設作業を自動的かつ連続的に行うことが実現する。岩手県盛岡市内で進めている「簗川ダム建設(堤体工)工事」に実装し、冬期の休止期間を経て、2019年3月下旬から再開される堤体コンクリート打設に本格適用する。
ダムコンクリート自動打設システムは、コンクリート製造設備「バッチャープラント」への材料供給から、軌索式ケーブルクレーンによるコンクリート運搬・打設までの一連の作業を完全自動化する。施工管理者は、コンクリートバケット(鋼製容器)の運搬先となる打設位置の3次元座標や投入するコンクリートの配合種別といったデータを入力し、作業開始を指示するだけ。
その後、バッチャープラントが稼働し、コンクリート配合種別に応じた骨材・セメント・水の材料計量、練混ぜ、ダム用コンクリート輸送台車「トランスファーカ」への積載を自動で行う。トランスファーカは、バケット位置まで移動し、コンクリートをバケットに積み替える。最後に、軌索式ケーブルクレーンがバケットを打設位置まで運び、コンクリートを投下する。
バッチャープラントへの材料供給もシステムが自動管理し、プラント内の骨材量が不足すると骨材貯蔵設備から自動供給。 後は、骨材貯蔵設備、バッチャープラント、トランスファーカ(運搬台車)、コンクリートバケット、軌索式ケーブルクレーンといった各設備が連動して、一連の作業を完全自動で繰り返し実行する。
施工管理では、自動打設の進捗を一目で確認できる総合管理画面を導入。管理画面には、バッチャープラント、軌索式ケーブルクレーンなどの各設備から出力される動作信号を基に、リアルタイムの打設状況がビジュアルで表示される。画面は、タブレット端末でも閲覧することが可能だ。
開発にあたっては、軌索式ケーブルクレーンで運搬するコンクリートバケットの位置座標の3次元制御が課題になったという。この課題を、軌索式ケーブルクレーンの操作制御情報と、運搬するバケットの3次元位置情報を連動させる仕組みを構築することで解決した。
ダムコンクリート自動打設システムを適用する「簗川ダム建設(堤体工)工事」の概要は、型式が重力式コンクリートダムで、規模は堤高77.2m(メートル)、堤頂長249m、堤体積22万8500m3(立法メートル)、天端標高は301.2m。発注者は岩手県 盛岡広域振興局、施工が清水建設・鴻池組・平野組JV。工期は2014年12月11日〜2021年年3月31日。
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