ウェザーニューズが日本初の実用化を目指す、“Raspberry Pi”を使ったAI動画解析の道路管理システム:道路管理
ウェザーニューズは、AIによるリアルタイム動画解析で路面状況を確認する「AI道路管理支援システム」を2019年夏までの実用化を目指している。道路管理者向けに、リアルタイム解析が実用化されると、日本初の取り組みとなる。システムの端末には、安価な“Raspberry Pi”を採用し、AI解析にはオープンソースの“OpenCV”を用いるなど、低コストでの導入・運用が可能なこともこのシステムの特長だ。
気象情報を提供するウェザーニューズは、高品質な道路管理を支援するため、2019年夏までに「AI道路管理支援システム」の実用化を目指している。開発には、情報通信研究機構(NICT)、クレアリンクテクノロジー、IoTコンサルティングが技術協力しており、高解像度の伝送を可能にしながらも、高額な機器などは使わず、導入・運用コストは抑えられている。
リアルタイム動画解析はオープンソースの“OpenCV”を活用
通常、道路管理で行う損傷・積雪・凍結といった路面状況の確認は、現場に直接行くか、定点カメラを通しての目視による点検が一般的に行われている。しかし、人の目による目視点検では、見落としやその精度などにバラツキがあり、今一つ信頼度に欠ける。これをAIによる自動検知に置き換えれば、早期発見が可能になり、パンク被害や事故の減少につながることが期待される。
ウェザーニューズが開発したシステムは、AI技術によるリアルタイム動画解析で、路面状況の変化を自動で検知・マッピングし、路面の積雪や損傷を早期発見し、早急の対処が可能になる。
システムのデバイスには、安価なシングルボードPC“Raspberry Pi(ラズベリーパイ)”を採用。カメラと「MIPI/CSI-2」の通信規格でつなぎ、出力はエンコーダーを介して、新規開発した映像伝送プロトコルで高品質映像をクラウドに伝送。モニター側でも、“Raspberry Pi”を通してディスプレイに表示させる。
動画解析には、もともとはインテルが開発したオープンソースのビジョン用ライブラリ“OpenCV(オープンシーヴィ、Open Source Computer Vision Library)”を活用。“OpenCV”には、物体認識や特徴点抽出、機械学習などの画像や動画を処理するさまざまな機能が備わっている。
実際のシステム実験では初弾として、岩手県盛岡市内を走行する車両の車載カメラ映像を利用して、事故やパンクの原因となる路面損傷(ひび割れや穴)を検出するリアルタイム画像の転送実証を行った。盛岡市内では2018年中は、記録的な寒さと雪に見舞われ、雪どけ時には市職員や市民の目視で約4800件もの損傷が発見された。市によるとパンク被害は、例年の10倍となる約200件に上ったという。
実験は2018年10月22〜23日に、盛岡市の協力により、市内を走行する車両の車載カメラ映像をリアルタイムに伝送し、独自技術を用いて映像を解析。伝送技術については情報通信研究機構(NICT)の技術で、高解像度な映像のリアルタイムな伝送が実現した。
ウェザーニューズでは、次の展開として今冬中には、路面凍結・積雪の把握や白線検知に関する実証実験も予定している。
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