ジャイロと加速度計を組合わせた計測システム、地中掘削機の位置を“最大1/1000”の精度で把握:センシング技術
熊谷組は、テクノス、ファテック、多摩川精機と共同で、CSM工法における掘削機の地中での位置を確認する「掘削精度計測システム」を開発した。従来方法に比べ、より精度の高い連続地中壁の施工が可能になる。
熊谷組、テクノス、ファテック、多摩川精機の4社は共同で、CSM(Cutter Soil Mixing)工法における掘削機の地中での位置を確認する「掘削精度計測システム」を開発した。
ジャイロと加速度計を組み合わせ、掘削機の両端座標を測定
CSM工法は、土留めや遮水に利用する“連続地中壁”を構築する工法。掘削機の回転カッターで地盤を掘削し、掘った土と、カッターの先端から噴射されるセメントミルクを地中で混ぜてソイルセメント壁を作成し、固まる前にH形鋼などの芯材を建て込む。
この工法ではこれまで、掘削中の掘削機の正確な位置は、運転者が傾斜計やジャイロセンサー(角速度計測器)を見ながら判断していたため、操縦者の技量によるところが大きかった。また、傾斜計やジャイロセンサーは、計測時点での傾きや回転は確認できるが、掘削機の横ずれや水平方向の回転誤差を継続して正確に計測することができない。そのため、掘削後に芯材を入れるまでは精度の高い掘削位置の計測が困難で、掘削で修正が必要になった場合は大幅な時間と費用が掛かってしまうのがネックとなっていた。
4社が開発した掘削精度計測システムは、ジャイロセンサーと加速度計を組み合わせた専用のセンサーを用い、掘削中に掘削機の両端位置を座標で示し、高い精度で地中にある機械の場所を特定することが可能となる。
センサーには、3軸のジャイロと3軸の加速度計を組み合わせた多摩川精機製のジャイロ式管路計測装置「(TUG-NAVI:タグナビ)」を採用。センサーから得られた情報を積分することで、相対座標を求めることができる。
計測の精度を上げるためには、ノイズとなる振動や回転を抑え、かつ短時間でセンサーを移動させる必要があったため、緊張させた2本のワイヤ間でセンサーを上下移動させる新たなウインチシステムを製作。移動中の振動や回転を抑え、高い精度で移動距離を計測するエンコーダー(位置検出器)も搭載している。
測定では、掘削機の両肩部に接続できるようにワイヤ架台を設置。掘削途中に随時、掘削機を静止させ、センサーを掘削機まで移動させて計測を行う。
検証実験はこれまでに4回行い、掘削検証では、22m(メートル)の掘削深さまで施工し、センサーによる計測を実施。掘削位置を固定し、上部のシーブ位置を移動して、掘削位置のズレを設定して計測した。結果、粘性の高い泥土中の移動でセンサーの振動や回転が抑えられたためか、1/1000以上の高い精度が確認できたという。
他にも、工場基礎実験、CSM工法掘削実証実験、システム動作試験を実施して、1/600以上の精度が得られた。今後は、現場適合の確認を目的に、実際の施工現場での検証を行っていく。
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