建設業は定年65歳以上の割合が製造業の倍、ヒューマンタッチ総研が定年制や再雇用の動向を分析
ヒューマンタッチ総研は、国内の建設業の人材市場動向をまとめた2018年12月分のマンスリーレポートをリリースした。今回は、定年延長の動きを踏まえ、建設業の定年制や再雇用の動向を分析。その結果、建設業では66歳以降も働ける企業は、現状で31.7%にとどまった。
ヒューマンタッチ総研は、最新の人材市場に関する公的データをまとめた「ヒューマンタッチ総研〜Monthly Report 2018年12月」を発表した。
2018年12月のトピックスでは、政府は11月に取りまとめた未来投資会議の中間報告の中で、現行は65歳までとなっている企業の継続雇用年齢に関し、「70歳までの就業機会の確保を円滑に進める」とし、企業や個人の自由度を認めつつ段階的に法制度を整備すると明記。レポートでは、このような定年延長の流れを踏まえ、建設技術者の定年年齢や再雇用の現状についてまとめている。
建設技術者の高齢化は急速に進み、2015年には35.2%が55歳以上に
厚生労働省の「就労条件総合調査」から業界別の定年年齢をみると、建設業では65歳以上に定年年齢が設定されている企業が22.2%で、製造業の10.0%を大きく上回っている(図表1)。
また、定年後の勤務延長もしくは再雇用制度がある企業での最高雇用年齢の割合をみると、定年後に66歳以降まで働ける企業は建設業が31.7%で、製造業の23.8%よりも多い(図表2)。一方で、建設業においても定年年齢を60歳に設定している企業は74.4%、最高雇用年齢の割合を65歳としている企業は68.3%に上り、依然として60歳定年制の企業が多数を占めていることが判明した。
国勢調査の結果から建設技術者の年齢構成をみると、55歳以上の割合は2000年の15.1%から2015年には35.2%に上昇(図表3)。企業の継続雇用年齢を65歳と仮定すると、2015年における55歳以上の建設技術者(16万7160人)は、今後10年間で順次、定年などで退職していくため、これが建設技術者不足の大きな要因になると考えられる。
こうしたデータを考慮すると、今後は各企業が、定年年齢の引き上げや政府方針に基づく最高雇用年齢の70歳までの延長といった施策を取り、シニア層の建設技術者らを最大限に活用することが、建設技術者不足解消の一助になるとレポートでは提言している。
雇用関連の月次データをみると、2018年10月の建設業就業者数は497万人で、前年同月比98.4%となり、10カ月ぶりに減少に転じた。ハローワークの新規求人数は7万4934人で、前年同月比105.2%と増加に転じた。
建築・土木・測量技術者(常用・除くパート)の有効求人倍率は前年同月比0.47ポイント上がり、6.50倍となった。41カ月連続で前年同月を上回り、厳しい人手不足の状況は長期化していることがうかがえる。
建設・採掘の職業(常用・除くパート)の有効求人倍率は、前年同月比0.78ポイント上昇の5.37倍となった。42カ月連続で前年同月を上回っており、建設技能工についても厳しい人手不足の状況が長期化している。
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