複雑化する複合ビルに求められる、マネジメントのポイントとは?:住宅・ビル・施設Week 2018
「住宅・ビル・施設Week2018」でNTTファシリティーズ取締役の小牟田保氏が講演。建物に求められる省エネ性能や事業継続性、地域貢献などの機能が高度化・複雑化する中、今後のビルマネジメントのポイントについて解説した。
住宅、ビル、公共施設、商業施設などあらゆる建築物を対象とした建築総合展「住宅・ビル・施設Week2018」(2018年12月12日~14日、東京ビッグサイト)で、NTTファシリティーズ取締役 ソリューション本部 ファシリティマネジメント部長の小牟田保氏が「大型複合ビルにおけるIoT×AIの最新トレンド」をテーマに講演。建物に求められる省エネや事業継続性、地域貢献などの機能が高度化・複雑化する中で、NTTファシリティーズが考える複合ビルのポイントを紹介した。
現在、東京都内では都心を中心に大規模な再開発が進んでおり、2025年まで約154万平方メートルのオフィスビルが供給され10年前に比べて4割増加するという統計もある。そのビルの特徴のひとつは大型化・高層化であり、2028年までに高さ200メートルを超えるビルが10棟(最高は390メートル)建設される計画だ。もう一つは用途の複合化で、オフィス、店舗をはじめカンファレンス、ホテルなど多彩な使い方を行うケースが増加し、東京都消防庁の資料によると大規模ビル(20階建て以上)では90%以上が複合ビルとなっているという。
大型複合化の背景には、国・行政は都市環境の整備を充実させる目標があり、地権者は収益性の向上がある。この互いの考えを両立させる制度に「国家戦略特区」などが設けられており、この制度により地権者は国・行政に国際競争力の強化や防火対策などを事業提案でき、国・行政は容積率の緩和など採択・規制緩和を行える。これにより高層化やビジネスサポート施設、インバウンド需要施設などのそれまでの以上の用途をもつ施設を構えることが可能となった。
ただ、こうしたホテル、オフィス、商業・展示施設などが入居する大型複合ビルからはさまざまな要望が、ビルマネジメントを行う中央監視室に寄せられ、「ビル運用・管理者はこれらの要望にスムーズかつ的確に応えることができるかが、大きな課題となっている」(小牟田氏)という。
具体的な課題として上げられるのが、大量のビル情報の管理と最適制御だ。管理すべき情報としては空調・換気設備、衛生設備、防犯・防災設備、その他(昇降機設備、機械式駐車場など)に関わる、それぞれの設備機器類の操作(設定、オンオフ状態)表示(状態、警報)計測(温度、湿度他)計量(消費電力)などで、その監視ポイント数は30万平方メートルクラスのビルのBAS(Building Automation System)で10万ポイントに達するという。業界では現在1万平方メートルごとに設備管理人が必要だといわれているため、このクラスのビルの管理人は30人必要という試算になる、また、監視カメラ・監視画面では200〜300台が設置されることになる。
こうした場合に起こり得る問題としては、大規模で情報量が多くなるため、(問題がある)現場の把握が難しい、現場にあった快適制御が困難、さらに対応が過剰になる傾向が出でくる、などが挙げられるという。
これらの問題が解決できず、来館者の快適環境が損なわれると、クレーム・人気低下により訪れる人が減少し、地権者にとっては売り上げの減少、エネルギーなどの運用コストの増加による収支の悪化につながる。そのため「大型複合ビルにおけるビル運用・管理者の役割は非常に大きなものとなる」と小牟田氏は指摘した。
こうしたビルのマネジメントとして注目されているのが、「IoT×AI」を用いたシステムによる業務支援だ。「IoT×AI」を導入に向けては、大量のビル情報を収集・管理し、最適な制御を行うために「共通言語化」「無線センサー」「分散制御」「クラウドの活用」の4つのポイントがあるとする。
IoTを活用したシステムを用いることで各居室の状況を確実に把握、各居室に合った快適制御、不要なエネルギーの低減につながる。さらにAIによる、快適性と省エネ、省稼働を実現する「予測制御」システムにより、さらなる快適性、省エネ性が図られる最適制御が実現することになる。
一方で、こうしたIoTのトレンドによって、さまざまな機器がつながるようになると、人的なセキュリティに加えサイバーセキュリティ対策も大きな課題になってくるとした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- BIMとセンサーで進化するビル管理、3D化で既設ビルにも可能性
NTTファシリティーズは「第1回 スマートビルディングEXPO」に出展し、展示ブース内に実際に設置した各種センサーからの情報をBIMデータと統合し、リアルタイムに可視化するデモンストレーションを披露した。 - 渋谷の“分かりにくさ”を改善、東急が語る渋谷の再開発ビジョン
「住宅・ビル・施設Week2018」で東京急行電鉄 取締役 常務執行役員の高橋氏が講演。現在進められている渋谷エリアの再開発プロジェクトの展望について語った。 - 次世代のスマート調光ガラス「Halio」、BEMSとの連携で自動調光も可能に
AGCは、「第3回 スマートビルディングEXPO」で次世代のスマート調光ガラス「Halio(ヘイリオ)」」のPRを行った。ヘイリオは、IoT技術をガラスに取り込み、熱やまぶしさを自動制御し、空調費削減の効果も見込め、ビルの付加価値を高める新建材。