利用可能な床面積を増やす「ハイブリッド耐火柱」、鋼管単独柱と比べ断面寸法25%減:木材活用
大成建設は、集成材と鋼管柱を一体化したハイブリッド耐火柱「T-WOOD TAIKA」を開発し、さいたま市の区役所新庁舎に初適用した。ハイブリッド耐火柱は、鋼管単独の柱と比べ、断面寸法も25%ほど小さくなり、利用できる床面積が広がる。
大成建設は2018年12月13日、集成材と鋼管柱を一体化し、木材の働きによる鋼管柱の強度、変形に対する補剛効果、耐火性と意匠性を備えたハイブリッド耐火柱「T-WOOD TAIKA」を開発し、公共建築物に初適用したことを明らかにした。
荷重支持力、耐火性、意匠性を保持したハイブリッド耐火柱
ここ最近、国内林業の活性化や森林育成を目的とした国産木材の利用促進に伴い、住宅だけでなく、中・大規模建築物にも木造を活用する動きが出始めている。
しかし、従来適用されてきた木質耐火柱部材は、建物の荷重を支持する木製の芯材部をモルタルや石こうなどの耐火被覆材(燃え止まり層)で囲み、表層を集成材などの木材で覆う構造のため、同等の支持力を持つ鉄筋コンクリ―ト構造や鉄骨造の柱と比べ、断面寸法が大きくなり、その分、室内で利用できる床面積が減ってしまっていた。
そこで大成建設は、木材を使用しながら、鋼管柱単独構造と同等の荷重支持力を持ち、耐火性を確保できるハイブリッド耐火柱「T-WOOD TAIKA」を開発。柱部材は、鋼管柱の外周に耐火被覆用の「けい酸カルシウム板」を配し、さらにその周囲を鋼管柱の補剛効果、耐火性および仕上げ材の機能を兼ねた集成材で覆って一体化している。
外周の集成材は、鋼管柱を補剛しているため、鋼管柱の軸力に対する強度を約40%向上させる。そのため、鋼管単独の柱と比べ、同じ外形寸法の鋼管柱を使用した場合、吹き付けロックウールなどが不要なため、厚さを薄くすることが可能。柱部材の断面寸法も25%ほど小さくなり、利用可能な床面積が増加する。
また、この構造では火災時には、集成材は燃え代層、鋼管柱周囲のけい酸カルシウム板は燃え止まり層として燃焼を止め、鋼管柱の温度上昇を抑制するという防災効果も見込める
ハイブリッド耐火柱は、構造実験と耐火実験を経て安全性を確認の上、1時間耐火の大臣認定・日本建築センターの構造評定を取得。現在建設が進められる「さいたま市大宮区役所新庁舎」に適用した。木材による鋼管柱の補剛効果、耐火性、意匠性を備えたハイブリッド耐火柱部材の公共建築物への適用は業界初だという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- CLTを“現し”の構造部材に利用できる「CLT+鉄骨ハイブリッド構造」を開発、「兵庫県林業会館」に初適用
竹中工務店は、直交集成板(CLT:Cross Laminated Timber)と鉄骨フレームを組み合わせた工法を開発し、2018年7月25日に5階建ての兵庫県林業会館建て替え工事に初導入した。この工法であれば、中大規模の耐火建築物でCLTの構造部材としての活用や木造の大スパン建築が実現し、木材の利用促進につながる。 - 建築の木材利用を加速、竹中工務店が自社技術を他社に展開
規制緩和や国内の林業活性化に向けた取り組みが進んでいることを受け、注目が集まっている建築物への木材利用。竹中工務店は環境展示会「エコプロダクツ 2016」に出展し、自社の木材活用技術を展示した。これまでは自社案件のみに適用していたが、ライセンス契約で他社にも提供し、建築への木材利用を後押ししていく方針だ。 - 鉄骨並みの耐久性を保有する木質集成材×炭素繊維「AFRW」を建築物へ初導入
前田建設工業は、帝人が開発した鉄骨並みの強度を有する高機能繊維の複合素材「AFRW(Advanced Fiber Reinforced Wood)」を建築物に初適用した建築プロジェクトを2018年10月に始動させる。対象となる建築物は、2018年度期末の完成を目指す、帝人の東京研究センター内の集会場。 - 屋根と学生を支える樹状柱、ユニークな木造建築が埼玉県に
埼玉県深谷市普済寺にある埼玉工業大学。学園創立110周年の記念事業の一貫として、2016年夏に敷地内に「ものづくり研究センター」が完成した。壁面を総ガラス張にし、木材をふんだんに活用した開放的な空間を目指した他、設備面では自然エネルギーを最大限活用する省エネ型の施設となっているのが特徴だ。設計を担当した平田松田設計に、コンセプトや設計プロセスについて聞いた。