建築物の省エネ対策強化で、“延べ300m2以上”の物件を基準適合義務化へ
国土交通省は、「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策の在り方について(第2次報告案)」で、意見公募の手続きに入った。これまで、延べ床面積で2000m2(平方メートル)以上を対象としてきた省エネ基準への適合義務化を住宅を除く“300m2以上”の中規模物件にまで広げる構えだ。
国土交通省は、社会資本整備審議会内の建築分科会 建築環境部会で検討を続けてきた「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策の在り方について(第2次報告案)」に関する意見公募を開始した。これまで、延べ面積で2000m2以上を対象としてきた省エネ基準への適合義務化を、住宅を除く300m2以上の中規模物件にまで対象を広げる。意見は、2019年1月5日まで受け付けている。
高い省エネ性能を持つEMS住宅・建築物の認定制度も創設へ
意見を受け付ける対象の第2次報告案は、地球温暖化対策計画に基づく、住宅・建築物分野における2030年度の中期目標の達成ため、1.新築住宅・建築物の省エネ基準への適合の確保、2.高い省エネ性能を有する新築住宅・建物の供給促進、3.既存住宅・建築物の省エネ性能の向上の3つの課題ごとに、実態に即した実効性のある省エネルギー対策を取りまとめたものだ。
住宅・建築物の省エネ化を推進する「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」では、これまで、延べ2000m2以上の大規模建築物(住宅以外)を対象に、省エネ基準への適合を義務付けてきた。また、大規模住宅、中規模住宅、中規模建築物(住宅以外)は、着工日の期日前までに、省エネ基準に適合した構造や設備の計画を届け出させるなどの施策を行ってきた。
今回、省エネ基準への適合義務化が迫られることが予定される「中規模物件(住宅を除く)」は、年間で約1万4000棟が新築されているという。報告案では、棟数ベースで全新築物件に占める割合が2.8%と比較的少なく、既に省エネ基準への適合率が91%を超えているなど、適合義務制度の対象に加えても市場の混乱を招かないと判断した。
一方、全新築物件の約9割を占める小規模の住宅・建築物では、設計者である建築士に、自身の請け負う物件が省エネ基準に適合しているか否か、建築主への説明を義務付ける新制度の創設を目指す。建築主は、省エネに意識が向かないことが多く、十分な情報が知らされていないことを考慮した施策だ。
これまで、年度ごとに省エネ性能の目標値を定める“住宅トップランナー制度”は、分譲戸建て住宅を大量に供給する住宅事業者が対象だった。案ではさらに、注文戸建て住宅や賃貸アパートを多く建築する住宅事業者にも、適用範囲を拡大。標準仕様の設定などによって、省エネ性能に影響する断熱材・窓など建材の活用を進める。
また、エネルギーマネジメントシステム(EMS)を導入し、複数の住宅・建築物で高効率熱源などを集約設置する物件を増やすため、EMSを活用して、高い省エネ性能を持つ物件には、認定制度を設ける。認定を受けた物件は、設備設置のためとして、延べ面積の10%を上限に容積率の緩和を受けられる容積率特例の対象とするなど、優遇措置を図る。
報告書の最後には、国土交通省に対し、本報告を踏まえ、必要な制度見直しを速やかに行い、住宅・建築物分野における2030年度の中期目標の達成を確実なものとすることが提言されている。さらに、その先の2050年までの80%の温室効果ガス削減の長期的目標も見据えて、住宅・建築物の省エネ性能に関する実態などの取り組み成果、関連事業者の設計・施工など実態について、継続的に最新の状況を把握し、その状況に即した制度の改正を図っていくべきとしている。
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