施設履歴管理システムとBIMを組み合わせた「電子附箋」、修繕・管理の履歴を3Dで可視化:住宅・ビル・施設Week 2018
前田建設工業は「第3回 スマートビルディングEXPO」に出展し、BIMと施設履歴管理システム「ichroa(アイクロア)」を組み合わせた維持管理業務を合理化する新機能のプレゼンテーションを行った。
前田建設工業は「第3回 スマートビルディングEXPO」(「住宅・ビル・施設Week 2018」内、2018年12月12〜14日、東京ビッグサイト)の自社ブースで、施設の維持管理システム「ichroa(アイクロア)」とBIMを融合させた新たな“施設履歴管理システム”を紹介した。
日々の膨大な記録から、必要なデータを3次元で直感的に検索
アイクロア自体は、修繕・補修といった工事履歴を記録し、一元的に管理できる施設のライフサイクルコスト低減を支援するシステム。2011年の運用開始以来、これまでに施設管理で260以上、道路などのインフラ管理でも運用実績がある。
アイクロアに蓄積される情報は、保全情報(法定内外点検記録、報告書)、修繕・改修・経年劣化・将来対応などの工事情報、運用情報(エネルギー使用量など)、スケジュール情報、図面・取り扱い説明書。こうした履歴は長期的に保存され、テキストや電子ファイルとしてサーバにたまっていく。
また、施設を長期にわたり使い続け、効率的に管理するには、「事後保全」だけでなく、「予防保全」を想定することも必要とされる。そのため、アイクロアに蓄積される施設の現状調査の結果などを分析することで、将来にわたる施設のメンテナンスが計画できるようになる。
前田建設工業では、このアイクロアにBIMを組み合わせ、施設の維持管理情報を3次元的に可視化した。ユーザーから長期間にわたって保存された膨大なデータを直感的に検索したいという要望があり、オプションとして、BIMによって3次元で見ることのできる「電子附箋(ふせん)」機能を追加した。
電子附箋では、アイクロアに記録された情報が、BIMモデル上で各部屋の中心に黄色や赤色の図形として表れる。これをクリックすると、保管されている修繕記録数、作業進捗、保存分類や文書類などの情報が表示される。閲覧には、BIMビュワーを使うため、BIMの知識の有無に関わらず利用することができる。
BIMとアイクロアは、双方にリンクし、例えばBIM上にある特定の機器の電子附箋を開くだけで、アイクロア内に保管されている取り扱い説明書などのテキスト情報を直接閲覧または入手することが可能だ。
また、3次元化されたことで、実際の建物に附箋が貼られている感覚で必要な情報を探せるため、データ検索が容易になった。さらに施設の維持管理につながる情報の確認が3次元モデルを見ながら直感的に行えることによって、効率的な予防保全の計画立案にもつながるという。
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