伸縮する鉄筋かごを用いた場所打ち杭工法を「JR渋谷駅改良工事」に初適用:杭工法
鹿島建設は、伸縮する“鉄筋かご”を用いる「ストランド場所打ち杭工法」を改良し、JR渋谷駅改良工事で初適用した。同工法は、ストランドと帯鉄筋の結合部に、新開発の90度回転可能な金具を取り付け、従来工法よりも伸縮がスムーズとなり、5日かかる鉄筋かごの建て込みが5時間で完了した。
鹿島建設は、低空頭条件での場所打ち杭工事に、伸縮可能な“鉄筋かご”を用いた「ストランド場所打ち杭工法」を初適用した。
改良工法では鉄筋かごの縮小・伸展がスムーズに
この工法で用いる鉄筋かごは、縦軸方向の鋼材に、通常の鉄筋に代えて柔軟性をもつストランド(ワイヤ)を使用する。特殊な金具で、帯鉄筋と結合することで「折りたたみ」ができる。工場で組み立てて縮小した鉄筋かごを現場で伸展することで、既存施設内の改修工事など、上部に空間がない場所でも、鉄筋かごの運搬や建て込みが可能になる画期的な工法。
鉄筋かごは、あらかじめ工場で組み立て、縮小した状態で杭孔まで搬入して設置。結束を解除して吊り具を緩めることで、鉄筋かごの自重により孔内に伸展し、建て込みが完了するという仕組み。鉄筋かごの縮小時の長さは伸展時に比べ約1/4〜1/6程度、ストランド自体が鉄筋に比べて軽量であるため、総重量も1/2〜2/3程度となり、鉄筋かごの運搬、建て込み作業の労力が軽減される。
近年は、鉄道構造物の複々線化をはじめ、連続立体化、駅改良といった工事で、低空頭や狭あいな場所での場所打ち杭の施工が増加している。いままでは、杭長分の鉄筋かごの運搬や建て込みが不可能な場合は、短く分割した鉄筋かごを機械式継手などで接続しながら施工していた。しかし、接続作業にはコストと時間がかかるため、鹿島建設は2005年に開発した「ストランド場所打ち杭工法」をさらに向上させる改良に着手した。
改良した工法では、縦軸方向のストランドと帯鉄筋との結合部に、新開発した90度回転可能な特殊な“回転金具”を採用。この金具を組み込むことで、縮小している際は帯鉄筋に沿ってらせん状に巻かれているストランドが、伸展する際は帯鉄筋と直行するように直線で伸びていく。この結合部の回転金具で、従来に比べて鉄筋かごの縮小・伸展がスムーズとなり、工事の適用に向けた大きな効果があった。
今回、JR東日本の協力のもと、鹿島・清水建設共同企業体(JV)が施工者となっている「JR渋谷駅改良(北)工事」へ適用した。実際の工事では、空頭3.5m(メートル)の狭あいな場所に、杭径1.2m・杭長7.9mの仮設杭を施工。従来工法では1本あたりに5日間ほどかかると想定された鉄筋かご建て込み作業が、わずか5時間で完了した。鉄筋かごは、1.25mと約1/6の長さに縮小した状態で搬入され、台車に載せて駅構内を容易に運搬したという。
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