セメント系建材を出力できる3Dプリンタを開発、幅1.7×長さ2×高さ1.5mの構造物を製作:3Dプリンタ
大成建設は、最大で高さ1.5mのセメント系建材を出力できる3Dプリンタを開発した。実証実験では、高さ1.3mの大型柱を120分で製作したという。
大成建設は、アクティオ、有明工業高等専門学校(国立高等専門学校機構)、太平洋セメントと共同で、建設用3Dプリンタ「T-3DP(Taisei-3D Printing)」を開発した。
マテリアルには、短時間で固化する特殊セメント系材料を開発
T-3DPは、出力素材にセメント系材料を採用し、3次元データを基に、ノズルから押し出しながら積層するタイプの3Dプリンタ。型枠を使わずに、最大で幅1.7m(メートル)×長さ2.0m×高さ1.5mの建設部材を自動製作することが可能だ。
3Dプリンタは、樹脂系の材料が一般的に利用されているが、建築・土木構造物の用途を見込んでセメント系の材料を使おうとすると、製作中に積み上げていくことで重量が過大になり、重みに耐えられず製作物が崩壊してしまうことが課題となっていた。
これを解決するために4者は、圧送しやすくかつ固化しやすい特殊なセメント系材料、専用ノズル、プリンタシステムをそれぞれ開発。これらの技術を組み合わせた3Dプリンタを完成させ、実大規模部材の製作を実証した。実験では、楕円形状でひねりのある中空の大型柱(幅30cm×長さ40cm×高さ1.3m)を8つに分割し、合計120分で出力。また、トポロジー最適化手法を取り入れ、従来工法では実現困難だった断面が連続的に複雑変化した形状の2人掛けベンチ製作にも成功した。
T-3DPで使うセメント系材料は、力が加わると柔らかく流動するため、圧送しやすいという特性がある。ノズルからの吐出後は、形状が崩れにくく、短時間で固化する特殊な性質を持ち、一度に高く積層できるため、大型建設部材をプリントすることが可能になる。
開発した特殊ノズルは、吐出量を常に一定に保つ。そのため、建設工事で使用されている動作が脈打つように周期的に寸断される“脈動”を伴うポンプとの組み合せが可能なため、実現場への導入も期待できる。さらに、複数部材の同時製作にも対応している。
プリンタは、制御用PCで読み込んだ3Dデータに基づき、製作物の大きさに応じてノズルから吐出するセメント系材料の量を自動で制御。プリンタシステムが特殊ノズルを自由に移動させ、セメント系材料を適切な速度(最速500mm/秒)で正確に積層し、実物大規模の建設部材を高精度に自動製作することが実現する。
大成建設は、このプリンタを導入したさまざまな建設部材の製作や現場での大型構造物の施工を実現するため、補強方法や品質管理手法、構造的な評価技術の確立に取り組み、積極的に研究開発を進めていくとしている。
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