建設車両の騒音を防止する「アクティブ消音システム」を改良、エンジン音を8dBまで低減:建設現場の騒音防止技術
奥村組は、建設機械などから発生する騒音の低減を目的として開発した「アクティブ消音システム」を改良し、走行する建設車両のエンジン音へ適用することを実現した。中部横断自動車道 森山トンネル工事で適用し、騒音を確実に低減する効果が実証された。
奥村組は、建設機械などから発生する騒音の低減を目的として開発した「アクティブ消音システム」を改良し、走行する建設車両のエンジン音へ適用することを実現した。既に改良したアクティブ消音システムを山岳トンネル工事で使用しているコンクリート運搬車両(トラックアジテータ車)へ試験的に適用し、エンジン音が低減されることを確認したという。
周囲への影響が甚大な音のみを対象に“逆位相音”を計算
アクティブ消音システムは、マイクで騒音を測定してスピーカーから騒音と逆位相の音を出力して打ち消す技術。低い周波数の騒音に対する効果が大きいのが特徴となっている。
これまでは、騒音の周波数を全て拾い出し、その逆位相音を計算してスピーカから出力していたが、走行している建設車両のエンジン音を低減しようとすると計算量が莫大となり、十分な効果が得られないことがあった。
改良にあたっては、建設車両のエンジン音には、音圧の大きい周波数が複数存在することに着目。対象車両のエンジン音をあらかじめ測定し、音圧が大きく周囲への影響が想定される複数の音域のみに、周波数の変動幅に応じたバンドパスフィルターを設定して、逆位相音を計算する方法を開発した。バンドパスフィルターは、入力された電気信号に帯域制限をかけたり、特定の周波数成分を取り出したりする電気回路。
この手法により、計算する周波数の範囲を限定し、周囲へ影響が少ない音圧の小さい周波数は逆位相音の計算を行わないことで、計算時間が大幅に短縮された。計算から出力まで、1秒未満の瞬時に行えるため、短時間で周波数が大きく変化するエンジン音でも即座に打ち消すことができるようになった。
実証試験は、中日本高速道路発注の「中部横断自動車道・森山トンネル工事」に、改良したアクティブ消音システムを導入して有用性を検証。現場では、コンクリート運搬に使用するトラックアジテータ車のエンジン音が、車路そばの民家に影響を与える懸念があったが、このシステムによりエンジン音を8dB(デシベル)程度にまで低減できたことが確認された。
また、改良したアクティブ消音システムは、バンドパスフィルターで逆位相の音を個別に計算し、最終的に1つの信号に合算してスピーカから出力できるため、騒音を発生するあらゆる機械や設備に適用することが可能だという。
奥村組では今後、ダンプトラックや重機、発電機などあらゆる機械・設備のエンジン音に適用可能なため、工事現場における周辺環境の保全技術として積極的に展開していくとしている。
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