鴻池組の「ICT推進課」が推進するICT/BIMの活用、現場ごとに独自の“BIM取り組み案件追跡表”を運用:BIM(4/4 ページ)
鴻池組では、「ICT推進課」を2017年に開設し、BIMとさまざまなICT技術とを組み合わせ、現場での活用検証を進めている。BIMに関しては、独自に「BIM取り組み計画書」を策定し、設計・施工BIMをはじめ、3Dプリンタによる模型の出力や施主へのVR提案なども含めた、ICTへの取り組みを可視化できる体制を整え、ICTによる業務改革を推進している。
ICT推進課が目指す先は何か?
i-Constructionの推進で広がりを見せる“点群データ”に関しては、GLOOBEが2019バージョンにアップデートしてから、点群に対応するようになり、読み込んだ点群データに4D機能を使って施工シミュレーションとして、設計内容の説明や作業工程の確認などに役立てている。また、「GLOOBE VR」により、点群からVRデータ化することで、周囲の敷地をモデリングしなくても、建物だけのデータでかなり整合性の高いモデルで確認が可能になる。
別の事例では、敷地周りに一方通行が多い倉庫では、トラックの運転手がどう見えるかをバックミラーやサイドミラーの絵姿も3次元で再現して確認。施主がテナントを呼び込む際にも、VR体験してもらうことが有効な手段となったという。一つのVR成功事例があると、これを次のクライアントに紹介すると興味を持たれ、VRの利用は徐々に広がりつつある。
また、別の取り組みとして、社内に「デジタルファブリケーションWG」を発足し、ICT推進課以外の現場で興味がある人を巻き込んでICT技術の検証を進めている。これまでに、ウェアラブル端末、ドローン、VR、Microsoft HoloLensなどの試験運用を行い、さらなる改善・改良を行っている。
一例を挙げると、HoloLensは、タワーマンションの完成後のイメージを複合現実(Mixed Reality)を通して屋外の建設現場で確認。エプソンのスマートグラスの検証では、遠隔で現場の情報をPC上からリアルタイムに把握した。
また、ドローンは、フライトプランを決め空撮したデータを重ねて、「TREND-POINT(トレンドポイント)」で点群化して地形モデルに変換。設計・施工BIMの地盤面のデータに活用している。
鴻池組では、こうして取り組んできた数々のICT検証を社内のWebサイト上で公開しており、社員全員が進捗状況や検証内容などを共有ができる体制が構築されている。
最後に、ICT推進による生産性向上を実現するための次のステップとして、BIM活用によるフロントローディングの確立、現場支援アプリ「KOCoシリーズ」の継続開発で現場支援を拡大させること、最新技術の運用事例を蓄積させることの3点が示された。
内田氏は「ICT技術の点の一つ一つが重なり、複雑に絡み合うことで、建設業における新しい業務改革につながる」と提言し、締めくくった。
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