地盤改良工事の“施工位置”と“工事進捗”をリアルタイムに見える化、BIMとの連携も視野に
東急建設とテノックスは、地盤改良工事を対象に施工位置情報と、施工機械から得られる施工情報を、リアルタイムで一元管理可能な施工管理システムを共同開発した。既に東京都市大学の学生寮新築工事に試験導入し、工事立ち会いのタイミングロス低減に効果があった他、施工中の計画変更にも迅速に対応できることが確認された。今後は、BIMモデルと施工管理システムを連携させ、維持管理や更新時の設計にも活用できるシステム構築を目指すという。
東急建設とテノックスは、深層混合処理工法による地盤改良工事(テノコラム工法)を対象に、施工位置と、施工機械の攪拌(かくはん)混合回数や固化材添加量などの施工情報をリアルタイムに一元管理できるシステムを開発した。このシステムの導入で、工事上の問題を早期発見して対応することで品質向上が図れる他、施工位置の誘導や帳票整理などの作業も効率化され、品質確保と現場の働き方改革の双方に貢献する。
元請会社の施工位置情報と、専門工事会社の施工状況を一元的に管理
両社が開発した「地盤改良リアルタイム施工管理システム」は、施工の元請会社が主体的に管理する「施工位置情報」と、地盤改良の専門工事会社が管理する「施工情報」をリアルタイムに連携させて、自動で施工管理情報に変換するシステム。
工事関係者の手持ちのスマートフォンやタブレット端末で、リアルタイムに情報を共有することができるため、進捗状況の把握や施工管理情報の確認などで、タイムラグが解消される。他にも、施工位置の誘導作業や帳票整理などといった手間を大幅に削減できるメリットがあり、“現場の働き方改革”にも貢献する。
現状の地盤工事では、地盤改良の専門工事会社が持つ施工管理装置の記録データを元請会社がリアルタイムに把握する手段がないため、施工中に起きる地層の急激な変化や地中障害などのトラブルを把握できずに、対策工事の遅延が生じていた。また、施工位置と施工データが連動していないため、施工管理情報に変換するためには、帳票を作成する手間が発生し、状況を把握するまでタイムラグが発生していた。
東急建設とテノックスは、この課題を元請会社と専門工事会社の共通の課題として捉え、2016年度から共同でシステム開発に着手。
開発した地盤改良リアルタイム施工管理システムは、東急建設が開発したトプコン社製「杭ナビ」を用いた地盤改良位置の誘導機能で、施工位置を取得してサーバに自動でアップロードする。専門工事会社の施工管理装置から得られる地盤改良機の深度ごとの攪拌混合回数や固化材添加量などの施工情報も、作業現場に設置された通信機器でリアルタイムに送られるため、データサーバ上で位置情報と施工情報が一元的に管理できる仕組みだ。
現場の管理者や設計監理者などの工事関係者は、インターネット環境さえあれば、手持ちのスマートフォンやタブレット端末から現場の内外を問わず、施工管理情報の把握がいつでも可能になる。
また、施工管理の結果報告書が自動で作成されるので、従来は施工当日に行っていた報告書類を整理する作業時間が大幅に短縮する。
実証実験では、2018年1月に地盤改良位置誘導機能の確認を開始し、2つの現場で施工位置の誘導作業を効率化できることが確認された。その後、テノックスが開発した施工管理装置から各種施工情報をリアルタイムに出力するセンサーとデータ取得ソフトが一体になった機能を追加して、2018年7月に「東京都市大学国際学生寮計画新築工事」で、位置情報と施工情報を組み合わせた施工管理システムとして試験導入した。
新築工事の現場では、工事施工管理者や設計監理者がシステムを運用した結果、工事事務所で施工の進捗が把握でき、工事立ち会いのタイミングロス低減にも効果があり、施工中の計画変更にも素早く応じることができたという。
東急建設では2018年6月より、情報通信研究機構(NICT)と共同で“施工位置特定技術”に関する研究を進めており、新たな情報通信技術で建設業の課題解決を目指している。今回開発した「地盤改良リアルタイム施工管理システム」は現場への導入を繰り返し、バージョンアップを行っていく。
将来的には、BIMモデルに施工管理情報をひもづけて、記録管理するシステムを構築し、建物竣工後の維持管理や更新時の設計計画に役立てていくとしている。
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