前田建設が新たな「円周シールド工法」の実証試験を開始、外環道の工事適用を目指す
前田建設工業は、新しいタイプの「円周シールド工法」の実証試験を開始したことを発表した。円周シールド工法は、既設トンネルから離れた土中に、シールド発進基地となる大空間を造る新工法。実現すれば、既設トンネルの円周をぐるりと取り囲む「外殻部」の構築が可能となるが、シールド機の3次元方向の制御を確実にしなければならないなど、まだ課題も残されている。
前田建設工業は、新しいタイプの「円周シールド工法」の実証試験を開始したことを明らかにした。年内にも実験を公開するという。
既設トンネルから離れた外周に空間を構築
今回、実証試験を行う新しいタイプの円周シールド工法は、同社が開発し特許を取得済みの円形外殻工法「CS-SC工法(Circular Shell structure system with Shield tunnels by Cuttablesegments)」の3大要素技術の一つ。CS-SC工法は、「東京外かく環状道路」都内区間の地中拡幅工事において標準工法にも選定されている。
CS-SC工法は、円周シールド工法で構築した既設セグメントを取り巻く大空間を外殻シールド機の発進基地として、縦断方向のシールドトンネル(外殻シールド)を掘削。その外殻シールド同士を連結して、トンネルをすっぽりと覆う「外殻部」を構築する工法だ。
従来工法ではシールドトンネル同士を重複することができず、シールド相互を連結する際は地山の露出が避けられなかったが、CS-SC工法であれば「切削セグメント」を用いてシールド相互を重複することで、地山を露出させずに大断面の円形外殻シールドを構築することが可能になる。
CS-SC工法のうち、円周シールド工法は、既設セグメントをガイドとして施工する従来の円周シールドとは異なり、既設セグメントから離れた土中に外殻シールド発進用の大空間を構築する。トンネルに沿って施工せずに、既設トンネルから離れた外周に空間を設ける方法をとる。
そのため、同工法では、既設トンネルがガイドとならないため、掘削に当たっては3次元の方向制御が重要となる。
円周シールド工法の推進機構は、円周シールド機のカッターで掘削しながら、円周セグメントに固定した後胴を反力にして、スライドジャッキ(伸び)で前胴を前進させていく。地中立坑に備えた元押しジャッキ(伸び)で円周セグメントを進めると同時に、スライドジャッキ(縮み)を同調させ、カッター部を掘削面に密着させる。
その際、土水圧を受けやすい場所では前胴が後退しないように、元押しジャッキとスライドジャッキ(縮み)がうまく協調しなければならず、この推進機構を確認するため実証試験を現在進めている。
実証試験にあたっては、東京外かく環状道路での活用を想定したサイズ(約12×6m)を模した6分の1スケールの実験装置(2×1m)を製作した。実験における評価では、▽土水圧に相当する負荷を掛けた状態でスライドジャッキ伸縮による前胴の方向制御、▽同じ状態でスライドジャッキ(縮み)と元押しジャッキ(伸び)の同調、▽同じ状態で前胴が後退しないこと――の3点を確認する。
新たな円周シールド工法を要素技術の一つとするCS-SC工法はこの他、止水補助工法として信頼性の高い地盤凍結工法「セグメントフリーズ工法」、地山が露出しない「セグメント切削シールド工法」で構成されている。
このうち、セグメントフリーズ工法は2015年3月に、切削シールド工法は2016年7月に、それぞれ大規模実験を行い、有用性が実証されている。今回、3つ目の円周シールド工法を実証することで、東京外かく環状道路工事への適用にめどがつく。これらのコア技術を合わせ、東京外かく環状道路の地下40m以上の大深度で、トンネル分岐合流などの地中拡幅部を非開削で構築することを目指す。
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