日本設計とオートデスクの提携が次の3年で目指す「BIMの可能性」:BIM(2/2 ページ)
日本設計とオートデスクは、BIMに関するパートナーシップ契約を2015年に結んでいるが、このたび新たに3年間の契約を更新する。この提携では今後、BIMを中心に据えて、日本設計が得意とする“超高層・大型案件”への対応や世界的にも遅れている“電気設備BIM”など、建築物の今以上の高品質化・高性能化に、BIMを最大限活用して取り組む。
一連のフローをBIMで行うためには、標準化された実行計画書が不可欠
BIMワークフローでは、企画から基本・実施設計、積算、施工、維持管理、FM戦略、長期計画までの一連をBIMによって行うことを目的としている。
一例として、英国では、各段階の承認行為などが整理されており、効率化されているため、スムーズなプロジェクト進行が可能になっている。これを国内で実現するためには、発注者のBIMガイドラインと、受注者の業務標準をつなぐ、発注者の目的と受注者の業務内容を調整した「BIM実行計画書」が求められる。現時点では、ガイドライン自体も大まかであり、どの段階で何を行うのかの実行計画書も無い。これは1社単独ではなく、業界全体のひな型となるものを策定していくことが示された。
最後のビッグデータは、将来的な試みとして、建築設計者やBIMエンジニアが設計したBIMデータを“BIM360 DOCS”にRevitで同期。Web サービス API「Autodesk Forge」により、クラウド接続から隔離されてしまっていた設計者やデザイナー、施主をもライセンスの有無にかかわらず、スマートにアクセスできるようにする。Forgeであれば、建築分野だけに限らず、製造・保全などへも共通の開発プラットフォームを通じてデータ活用の道が開けるようになる。
グレスパン氏は、「設計に必要な3Dデータと情報が、一つのプラットフォームに統合された“Integrated BIM”は、ワークフローをつなぐ役割を果たす。日本設計とオートデスクのパートナー関係で、業界のBIM標準化を進めていく。そのためにも、現状でまだ普及段階にある日本のBIMを拡大させていけるか、ラウンドテーブルで議論を重ねていきたい」と展望を語った。
また、千鳥氏は「当社ではBIMのフル活用はまだ無く、もともと計算で使っていた構造や設備の方が進んでいる。設計BIMから施工BIM、さらにその先の施主が活用するところまで至るには、業界を挙げての“ガイドライン”と“実施計画書”の統一が求められることになるだろう」とした。
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