既製杭の支持層を確実に検出するシステムを奥村組らが開発、既に深度15mの地盤で実証
奥村組ら3社は、既製杭の支持層到達を直接確認できる支持層検出システムを開発した。既に同社の技術研究所敷地内の支持層深度15m(メートル)の自然地盤に対し、3点式杭打機とコーン貫入試験装置を内蔵した杭径1000mm(ミリ)用のオーガーを用いて打設試験を行い、有効性を確認した。
奥村組は、日本コンクリート工業、佐藤鉄工、地盤試験所の3社と共同で、既製杭の支持層到達を直接確認できる「支持層検出システム」を開発した。実証実験では、地盤の換算N値と事前の地盤調査で得られたN値がほぼ一致し、支持層への杭到達を想定通りに確認できたという。
地下50mまでの大深度施工でも支持層到達を確認
このシステムでは、スクリューオーガーの先端にコーン貫入試験装置を装備することで、支持層の換算N値を直接かつ正確に測定。コーンの載荷にはオーガーヘッド内の油圧ジャッキを使用することで、硬質地盤の目安となるN値50を超える硬い地盤でも計測することが可能だ。
これまで既製杭を埋込み工法で施工する場合、その支持力は杭先端の支持層から得る先端支持力に大きく左右されるため、施工品質を確保するためには、支持層到達の確認が重要とされる。
埋込み工法のうち、中掘り杭工法は、品質の安定した既製杭を振動や騒音を抑えて施工できるメリットがあるが、中空の既製杭内部でスクリューオーガーを回転させ、先端で掘削した土砂を地上部へ排出しながら杭を沈設していくため、支持層への到達を直接確認することができない。このため、中掘り杭工法で杭先端が支持層に到達したかどうかの判定には、一般的に掘削抵抗に応じて変化するオーガーモーターの積分電流値をもとに、間接的に判定する方法が採用されている。
しかし、掘削に要した電流の時間積分値である「積分電流値」に反映される掘削抵抗には、レキ混じりの地盤における杭の中空内周面とスクリューオーガー間へのレキのかみ込み、深度により大きくなるオーガーの周面摩擦などのノイズも含まれるため、支持層到達時の積分電流値の増加のみを判別することができず、さまざまな施工条件を考慮して支持層の到達を推察していた。
新たに開発した支持層検出システムでは、積分電流値の測定に加え、オーガーの先端に装備した外径φ36mm(ミリ)の「コーン貫入試験装置」で、想定支持層に対して貫入試験を行い、地盤支持力を測定。貫入試験装置は地盤工学会で基準化されている電気式コーン貫入試験装置と同じ仕様で、地盤の換算N値を求めることができる。
また、掘削によって緩んだ地盤は正確に測れないため、緩んでいない深さの地盤へコーンを貫入できるようにジャッキのストロークは1200mmと長めに設計している。
大深度地下での計測データをアナログデータのまま地上に伝送すると、ノイズに阻害されて計測データが正しく取得できない可能性があることも踏まえ、オーガーヘッドに内蔵したA/D変換器でデータをデジタル変換して地上のPCに伝送する。その結果、地下50mまでの大深度施工でも、計測データの取得は可能。
実証実験は、茨城県つくば市にある同社の技術研究所敷地で実施。支持層深度約15mの自然地盤に、3点式杭打機とコーン貫入試験装置を内蔵した杭径1000mm用のオーガーを用い、計7本の打設試験を行った。施工性に問題がないことが確認され、このシステムで測定した換算N値と事前の地盤調査で得られたN値もほぼ一致し、有効性が確認された。
奥村組では今後は、杭基礎工事にシステムを活用し、施工実績を増やしていき、プレボーリング工法や小口径杭など適用領域を拡大して普及展開を図っていくとしている。
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