飛行計画から点検報告書の作成までを自動化、“鉄塔”向けドローン点検サービスのβ版提供開始:ドローン鉄塔点検
センシンロボティクスは、“ドローンによる鉄塔点検”に特化した機体も含むパッケージソリューション「TOWER CHECK(タワーチェック)」のβ版提供を開始した。カメラを搭載したドローンを自動運行させて鉄塔を撮影し、撮影したデータはAIによる画像解析にかけて、錆や腐食の発生箇所を自動検知。その後の報告書作成まで、一気通貫のドローン点検業務がTOWER CHECKにより自動化される。正式なリリースは年明け以降となる見通し。
ドローンを用いて設備点検、災害対策、警備業務向けの各種サービスを提供しているセンシンロボティクスは、鉄塔を対象にしたドローン点検のサービスを開始する。導入した企業には、初回に技術講習やサポートが受けられるが、最終的には、2ステップでフライトプランを設定してしまえば、ドローン自動飛行、AI自動画像解析、レポートの作成までの一連の業務が自動化されるため、ユーザーだけで鉄塔点検が行えるようになる。
今回、2019年提供開始の正式版に先立ち、β版をリリースし、通信事業者・電力事業者向けに本格展開していくことを目指して、実証実験およびトライアル導入を進める。
従来の目視点検に比べ、57%のコスト削減が見込める
これまで鉄塔の点検は、作業員が実際に鉄塔に登り、目視で点検していたが、高所作業による墜落事故のリスクがあり、事業者側にとっても人件費や作業工数が負担となっていた。
センシンロボティクスのTOWER CHECKは、近接目視点検を自動運行ドローンの運用により代替。フライトプランも簡単に設定でき、最終的な報告書作成までを自動で行うため、コスト・作業効率・安全性の課題が解決する。試算では、従来の点検方法の約57%のコストカットを見込める場合もあるという。
ドローンの飛行設定は、鉄塔に特化したGCS(Ground Control System)を活用することで、2ステップの設定で3D自動飛行ルートが生成される。今までは、10項目以上のパラメータを手動で入力する必要があった煩雑なフライトプラン設定作業が、ウィザード形式で中心点決めおよび鉄塔情報の入力のみで完結。ドローンは、設定ルートに沿って自動航行しながら、点検対象を旋回するようにくまなく撮影する。
画像解析は、システム計画研究所/ISPの開発したAI/ディープラーニング(Deep Learning)を応用した独自の画像解析エンジンを採用。ISPの独自技術では、通常は大量の学習データを必要とするディープラーニングが少量の学習データで済み、データ蓄積を待たずに開始でき、点検データの蓄積に応じた短いサイクルで、異常検知の性能が向上する。
AIは錆や腐食の特徴を捉えて抽出し、ボルトの緩みなどの異常には、3Dモデリングにひも付いた詳細画像をユーザーが確認することで、近接目視と同程度の点検が可能になる。
自動検知の結果は、クラウド上にアップロードして管理され、3次元モデルに異常発生箇所として自動でプロットされ、レポートを自動生成。ユーザーによる点検結果も組み合わせることで、より正確なレポーティングが可能となる。
サービスは月額制で、初回準備としてドローン業務自動化プラットフォーム「FLIGHT CORE(フライトコア)」を使用した鉄塔が対象の「自動航行設定講習」が行われる。また、初回の点検時にはセンシンロボティクスのスタッフからサポートが受けられ、2回目以降はユーザー自身だけで、ドローンを飛ばすことになる。なお、機体などのメンテナンスやトラブル対応などのサポートは、契約期間中は継続して提供される。
FLIGHT COREは、地上管制システム、業務実績管理システム、データ連携システムで構成されており、特別な知識や技術が無くてもドローン業務の自動化が実現する。対象のドローンを既に保有している企業には、アプリケーションのみの提供にも応じる。
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