BIMを活用した施設管理と一体の「自動運転支援」2020年の実用化目指す、清水建設:施設側でサポートする自動運転技術とは?
清水建設は2018年10月30日、名古屋大学発ベンチャー企業・ティアフォーの協力を受け、車両の自動運転を“施設側”からサポートするシステムを構築し、東京・江東区の技術研究所で実証実験を開始したことを公表した。システムでは施設のBIM(Building Information Modeling)モデルを活用し、3次元デジタルマップを作成。自動運転以外にも、シャッター制御や回転灯・音声報知などの施設の管制・監視にも活用して、敷地内の管理を一体的に行う。
清水建設は、2020年3月までの施設内自動移動化のシステム構築を目指し、東京・江東区の同社技術研究所内に、自動運転車両の安全でスムーズな走行を施設側からサポートする管制・監視システムを構築した。自動運転技術などを開発するベンチャー企業・ティアフォーの技術協力のもと、システムの実効性を検証する実証実験がスタートしている。
自動運転車両の安全・効率的な走行を施設側から支援
実証実験にあたり、敷地内の自動運転の鍵となる“高精度3次元マップ”を作成。敷地内にある建物群のBIMモデルと、3次元地図を組み合わせたダイナミックマップと、自動運転車両の位置や走行状態などの情報を一元管理できる「管制・監視システム」を開発した。
実際の実験では、施設側の管制・監視システムと、ティアフォー社が開発した運行管理システム「Autoware FMS」をクラウドサーバ上で連結。名古屋大学などが開発したオープンソースの自動運転ソフトウェア「Autoware」を搭載した3台の完全自動運転化した小型EV車両を同時に走行させる。車両の走行状況に応じて、建物設備を自動コントロールする施設管制システムと自動運転システムの連携実験を行う。
車両の走行テストでは、管制・監視システムからの指示に基づく、車両の発進・走行制御の実効性を確認しつつ、監視カメラとAIの画像認識技術を活用して車両や人の状況を把握することで走行中の安全をサポートする。車両と施設のシステムを連携させた実験では、構内で自動運転車両が建物内外をシームレスに移動するために、車両の到着に合わせてシャッター開閉を自動でコントロールする技術も試みる。
清水建設では今回の技術を拡大発展させ、車両とエレベーターを統合制御した技術、歩行者ナビゲーションシステムとの連携など、施設・街区内で自動運転車両と人が共存するための環境構築に取り組む。施設内移動システムは、実証実験の検証を踏まえ、2020年3月までに、複合商業施設をはじめ、オフィス、ホテル、工場・物流施設、キャンパス、病院、交通ターミナル向けにシステム構築を目指す。
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