立命館が研究を進める“非破壊試験”を駆使したインフラ点検の早期評価技術:インフラメンテナンス(1/3 ページ)
立命館大学ではインフラの老朽化問題に対応すべく、人材育成や研究を進めている。インフラ点検では非破壊試験によるモニタリングに焦点を当て、AE法を活用した鉄筋腐食の早期評価などに取り組む。土砂災害に強いポーラスコンクリートの空隙率は、RI法を応用することで非破壊での割り出しに成功している。
立命館大学は2018年10月22日、高度経済成長期に建設されたインフラの老朽化問題に関し、国土交通省の動向や最新技術を紹介するプレスセミナーを東京キャンパスで開催した。理工学部教授の野阪克義氏は「橋梁(きょうりょう)の設計と劣化の影響」をテーマに、同学部准教授の川崎佑磨氏は「安心・安全に利用できるインフラの維持管理を実現するために」の演題でそれぞれ講演した。
構造・部材がさまざまな橋梁の点検で重要なポイント
野阪 まず橋は桁・アーチ・トラス・ラーメン・吊(つ)り・斜張といった形状から適切なものを選択、または組み合わせることで、人や車両などが渡れるように構造的な工夫をして“支える”のが原理である。
材料には、主に鋼材とコンクリートが用いられ、鋼材は引張・圧縮ともに同程度の強度があるものの、薄板を組み合わせて使われることが多く、その場合には圧縮荷重による座屈や曲がるという現象が生じることが多い。
コンクリートは逆で、圧縮に強いが引張に脆い。RCで略される鉄筋コンクリートは、端的に引張で割れないよう鉄筋で補強している。近年採用が進むプレスレスト・コンクリート(PC)は、圧縮に強いコンクリートの特性を生かし、曲がっても引張が入らないようあらかじめ圧縮をかけたものである。こういった構造や材料を適材適所で使っていくのが橋の大原則となる。
橋の設計は、決められた荷重に対して安全に抵抗するよう定めていく。車両などの荷重が乗った際に発生する応力や断面力といった外力作用に対し、構造や材料の組み合わせで抵抗力が上回るようにする。そこに“安全余裕”をどの程度設けるかは、考え方によって異なり一概には言えない。
野阪 2028年には築50年が経過する橋梁が約半数の50%を越える見込みにあり、その大部分が市町村管轄による道路のため、ケアが難しいのが実情だ。そうした背景を見据えて、国は「長寿命化修繕計画」を策定し、5年に一度の近接目視による4段階で判定するシステムを設けた。ただし、土木学会の高木千太郎氏によれば、「ウイークポイントになるところを注視するのが当然の理屈で、それをわきまえずに概略点検となっては単に橋を見に来ているだけだ」と点検が形骸化する懸念を表明している。
橋は、さまざまな形状や材料で成り立っているため、一般的な橋というものは存在しないに等しい。落橋は材料の劣化や設計時の想定を越えた場合に生じ、“安全余裕”という観点も重要になる。点検の問題点として、まずマニュアル化されていることが挙げられよう。橋梁ごとに重要となる箇所・部材は異なり、記録を残すにしてもピックアップすべき点を把握すべきだ。逆に、全ての橋梁の詳細データを残そうとすれば、膨大なものとなってしまう。ICTやAIといった最新技術を活用する手もあるが、それを市町村が進めていくとなると、コスト面で大きな負担になり、非現実的と言わざるを得ない。
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