埋戻材に軽量土を用いて阪神高速本線“函体”の合理化施工を実現、現場に製造プラント設置
鹿島建設は、阪神高速のトンネル工事で、高速道路本線函体上部の埋戻材に、軽量なHGS気泡混合土(HGS:High Grade Soil)を採用した。本線函体の頂版・底版の部材厚を薄くすることが可能となり、一般的な埋戻し土を使用した場合に比べ、15%の工期短縮、20%のコスト縮減が実現する。
鹿島建設は、大阪府堺市で施工中の「阪神高速大和川線常磐工区開削トンネル工事」で、高速道路本線の函体上部の埋戻材に、軽量なHGS気泡混合土を初適用した。これにより、本線函体の頂版・底版の部材厚を薄くすることが可能となり、一般的な埋戻し土を使用した場合に比べ、躯体構築工および掘削工を合理化したことにより、工期で15%の短縮、コストで20%の縮減が実現する。都市部の工事で約15万m3という大規模なHGSの打設は、国内初の試み。
騒音・振動にも配慮した製造プラントを現場に設置
阪神高速大和川線は、全長約10km(キロ)の自動車専用道路。工事では、西除川(堺市北区)の直下に延長350m(メートル)の本線函体と、出入口ランプ376mを開削工法で構築する。本線函体は、最大掘削幅が41m、最大掘削深さが38mの広幅員・大深度で、躯体は1層2連から本線に接続し、出入口ランプ部では1層3連に拡幅するという複雑な構造をしている。
工事発注は、阪神高速道路から、設計・施工一括の総合評価落札方式で行われた。鹿島はHGSを用いた埋戻しにより、上載荷重の低減を図る躯体構造の合理化を技術提案した。工期は2008年6月17日〜2020年3月31日。施工者は鹿島・飛島建設JV(共同企業体)。
HGSとは、原料土に水とセメントなどの固化材、気泡を混合して流動化・軽量化を図ったもの。これまで軟弱地盤上での盛土、橋台・擁壁の裏込め、構造物側部の埋戻しに利用されている。阪神高速の工事では、現場に製造プラントを設置し、200〜300m3(立法メートル)/日のHGS打設を行っている。HGSの製造手順は、原料土と添加材、水を混ぜ、解泥し、密度を調整。その後、振動ふるいで、10mm(ミリ)以下に粒度調整を行う。ミキシングプラントでセメントを加え、練り混ぜ、事前に発泡させた気泡剤をブレンダーで混合し、打設ヤードへ圧送・打設する。
HGSの品質は、軽量性や流動性、強度の試験を定期的に実施し、品質管理を徹底することで、ばらつきのない均質な製造が可能になった。さらに、HGSに添加材(ベントナイト)を混合することで、透水性を低くし、硬化後の吸水による影響を抑え、長期にわたり安定した品質を確保している。
現場は、都市部で住宅に近いため、製造プラントに防音パネルを設置し、HGSの運搬には音の小さいスクイーズ式ポンプを適用するなど騒音・振動にも配慮しているという。
鹿島は本工事で適用したHGSによる埋戻し実績を生かし、都市部におけるさまざまな地下工事の生産性向上の1つのツールとして、展開していくとしている。
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