“CLTパネル工法”に特化した初の構造計算ソフト、3階建て共同住宅で確認申請を取得:CLT工法の構造計算ソフト
国による木材利用の促進が進められる中、木造の大規模建築物の構造材として、大開口部や2階部分の持ち出しなど自由度の高い設計を可能にするCLTパネル工法には注目が集まっている。国内でもトップクラスのCLT建築を手掛けているライフデザイン・カバヤは、CLTパネル工法に特化した初の構造計算ソフトを開発した。
ライフデザイン・カバヤは、業界初のルート3まで対応可能なCLT(Cross Laminated Timber/直交集成板)パネル工法の構造計算ソフトを2018年8月に開発し、同年10月から運用を開始した。
一般のCLT建築でかかる計算日数の約半分で解析可能
今回開発したCLT向けの構造計算ソフトは、時間・コスト・経験などの点から難しいとされてきたCLT建築の構造計算をサポートする業界初のソフト。
CLTパネル工法を用いた建築物の構造計算では、「簡易的な許容応力度計算(ルート1)」、高さ31m(メートル)以下の建物を対象にした「許容応力度計算(ルート2)」、高さ60m以下の建物で水平力に耐えられる限界の力を求める「保有水平耐力計算(ルート3)」などがある。CLT構造計算システムはルート1からルート3までに対応する。
ルート1では、通常は仕様規定に基づき、多くの壁量が必要となるが、構造計算システムの保有水平耐力計算(ルート3)と、オリジナルCLT金物を組み合わせれば、半分ほどの壁量で済む設計も可能となる。
新建材であるCLTを対象にした構造計算ソフトはこれまでに無く、今までは手計算、もしくは既存ソフトを複数駆使して計算していた。開発したソフトは、応力計算から断面算定までのトータルでの計算を実現。簡易構造計算、実施構造計算など、一般のCLT建築で必要とされる計算日数の約半分で解析ができ、クライアントへの提案もよりスピーディーに行える。
また、構造計算書の出力だけでなく、接合金物の干渉チェックに加え、構造図の出力にも対応する。金物の数、CLTパネルの厚さ・長さ・材積までを出力するため、積算や発注の手間も簡略化される。このソフトを導入することで、今までCLTで実績がない設計者でも、構造計算が簡単に行えるようになる。木造住宅中心の設計者が住宅以外の学校や老人ホームなどの非住宅設計へ参入し、逆に非住宅中心の設計者がこれまで手掛けていた非住宅の物件でCLT工法を導入するという双方の可能性が広がる。
構造計算ソフトはCLTを利用した日本初の工法評定(評定番号:BCJ評定-LW0074-01)を取得。これで建築確認申請と構造計算適合性判定の審査もスムーズに行えるようになり、既に確認申請の実績として3階建ての共同住宅で確認済証の交付を受けている。現在は店舗付き住宅で2件目を申請中だという。
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