構造部門で初の“BIMによる確認申請”、大和ハウス工業が実現できた2つのポイント:BIMの可能性「BIM×確認申請」(3/3 ページ)
BIM(Building Information Modeling)元年から2018年で11年が経過し、国内でもBIMによる確認申請が一部で始まっている。大和ハウス工業は、社内で構造BIMの作業フローの統一的な基準を定め、構造部門で初の試みとなるBIMによる確認申請を行った。構造BIMで確認申請するためのカギや構造BIMで何が変わるのか、大和ハウス工業の講演から読み解く。
ペーパーレス化で許認可期間を短縮
現状の確認申請は、紙ベースにしているため非効率で、構造計算書と構造図の整合性確認に手間がかかるなどの課題がある。
大和ハウス工業のBIMによる確認申請では、確認審査機関の日本ERIと「確認申請BIM」の体制を構築し、2018年9月末までに2件の確認申請を実現させた。確認申請ではRevitで作成したBIMモデルを両社間で共有。意匠だけでなく、構造・設備も3D化して、構造の確認申請では構造計算モデルと申請図モデルを比較した。BIMクラウド「BIM360 Docs」も導入し、単にクラウド上のデータのやりとりだけでなく、互いの図面比較・指摘事項の送付・回答でも利用した。
意匠・構造・設計が統合されたBIM設計モデルで申請を行うのが確認申請BIM。そこではBIMは共通言語として共有され、業務全体の効率化に貢献する。BIMによって部門間の壁が無くなるため、例えば意匠の鉄骨や基礎は構造部門が作成したモデル、便器やユニットバスは意匠のモデルに設備部門が配管したモデルとすることで、設計作業の2度手間が解消される。さらにクラウド環境で同時に複数の人間が作業できるシステムを取り入れれば、作業分担や図面の新旧確認、ペーパーレス審査が可能となる。
この確認申請の取り組みでは、構造設計図書の整合性比較は、Revit以外にも、Excelやクラウドでも行った。Revitではモデルを統合し、赤(計算モデル)と白(構造モデル)に色分けして、部材不整合や新たに追加された部材をチェック。Excelでは、モデルをExcelに書き出し、計算/構造モデルを比較した。クラウドでは、どこからでもRevitデータにアクセスできる利点で、新しいモデルと古いモデルをバージョン別に分けることで、新旧のモデルを検討した。
確認申請BIMで一番の成果だったのは、ペーパーレス化で、郵送の省略や審査項目の削減により、許認可期間の短縮化が見込める。構造審査では、図面間の整合性の他、構造計算との整合性も担保できればとくにメリットが大きい。
最後に、宮内氏から確認申請BIMのさらなる効率化につながるポイントが示された。まず「カルテック社のすけるTON for Revitなど、BIMソフトをつなぐアドオンツールを有効活用することが部門間連携では重要」とした。他には、「申請者と審査側の合意によるBIM作成・審査ルールが必要なこと、複数のモデルが存在すると生じがちなデータの連携ミスマッチングを防ぐ目的で、一つのモデルに統合して運用することが不可欠だ」とポイントを語った。
今後については「大和ハウス工業では、BIMを中心に各部門が連携して業務を行うことで、生産性向上と失敗コストの削減を目指していく」と展望を語った。
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