“液状化”や“道路陥没”対策に有効な「3次元地盤モデル」、渋谷再開発にも活用:buildingSMART International Summit,Tokyo(2/2 ページ)
「buildingSMART International Summit,Tokyo」が2018年10月16〜19日に開催された。プログラムの中から、3次元地盤モデル(3D subsurface model)の取り組みを語った応用地質・島裕雅氏の講演を取り上げる。
インフラのライフサイクルを考える上で「3D地盤モデル」は有効
実際に3D地盤モデルのメリットでは、支持杭の長さ計算の事例が示された。3D地盤モデルを簡単な手順で作成する応用地質のソフトウェア「OCTAS Drafter(オクタス ドラフター)」で作成した地盤モデルを、BIMソフトウェア「Autodesk Revit/Dynamo」のBIMモデルと連携させることで、地盤モデルを変更すると、それに合わせて建築物の各支持杭の長さも自動的にアップデートされる。
また、地滑り対策に3D地盤モデルを利用することで、複雑な3次元構造を理解する空間的な拡がりや深さ、地滑り表面の動きを3次元で把握でき、有効な対策が立てられる。
3D地盤モデルを導入した実際のケースでは、山岳トンネル工事を紹介。この案件では、堆積岩で構成された約70mの急斜面がトンネル上にあり、将来的にトンネルの崩落が懸念された。そのため、高速道路の発注者は、地盤とトンネルの相互作用を3Dモデルで確認して、安全なプロセスを検討し岩盤の除去を決めた。
東急建設が手掛けている渋谷の再開発でも、周辺の3D地盤モデルを作成。既存のBIMモデルに加え、東急建設が行ったボーリング調査のデータも統合して、渋谷エリアの詳細なモデル化を行った。3D地盤モデルにより、支持層の状況を把握し、圧密や陥没、液状化といった地盤リスクを知ることができ、工事着手前の設計段階で計画を変更して最善策を取ることが可能になった。
また、東京都心部の地熱ポテンシャルの検討でも、10mグリッドの格子で3D地盤モデルを生成し、深度200mまでの地下状況を検討した。
島氏はまとめとして、「地下リスクを抱えたままだと、施工後に地盤沈下や陥没、液状化などの事故につながりかねない。計画・調査・施工・維持の段階へ進むに従って追加的な情報を得ることで、地下のリスクを段階的に低減していくことができる。3次元の地盤モデルは、インフラのライフサイクルを考える上でも、維持・管理の費用対効果、リスク管理を行う際にも役立つ。今後、インフラのCIMモデルが普及していく中で、3D地盤モデルも標準化されることが重要だ」と提言した。
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