油圧駆動の建設重機の操作で物体の触感を再現、大林組×慶応大:重機の遠隔操作
大林組は慶應義塾大学と共同で、建設重機のオペレーターが重機の先端部が触れた物体の硬さや柔らかさなどの感覚を再現するシステムを開発し、実験装置を用いた検証作業を進めている。
大林組は慶應義塾大学(理工学部システムデザイン工学科専任講師 野崎貴裕、グローバルリサーチインスティテュートハプティクス研究センター)と共同で、建設重機のオペレーターが重機の先端部が触れた物体の硬さや柔らかさなどの感覚「力触覚」を再現する技術「リアルハプティクス」を油圧駆動の建設重機に適用するためのシステムを開発した。
重機作業時に“力触覚”を感じて作業効率を向上
リアルハプティクスは、慶應義塾大学 グローバルリサーチインスティテュートの大西公平特任教授が発明した現実の物体や周辺環境との接触情報を双方向で伝送し、力触覚を再現する技術。これまでのロボットは、力触覚を持たずに作動するものが多かったが、リアルハプティクスを用いることで、ロボットに力触覚を与えることに加えて、触れた物体の感覚を伝送することで、遠隔にいる操作者の手元でも同様の力触覚が再現される。
リアルハプティクスは、他のハプティクス(触覚技術)と異なり、機械駆動部が受ける反力を利用するため、触覚を検知するセンサーは少なくて済む。操作側と駆動側の「力の倍率」や「距離の倍率」も任意に設定でき、操作側は小さい力やわずかな動きでも、駆動側は数倍の力で大きく稼働させられる。
通常、建設重機を用いた作業は、重機が物体に触れてもオペレーターがその触覚を感じることがなく、視覚・聴覚から得る情報を頼りに操作しているため、どの程度操作レバーを傾ければよいかなどは、オペレーターの経験に頼らざるをえなかった。災害復旧工事などの人が容易に立ち入れない危険な場所では、重機を遠隔操作して行うが、視覚・聴覚からの情報量がさらに減少するため、作業効率は通常の半分以下にまで低下するとされている。
こうした課題を解決するため、建設重機にリアルハプティクスを適用することが求められるが、通常の重機は電動と油圧の2つの制御系を組み合わせて駆動させるタイプが主流で、電動と油圧では応答性などの制御特性が大きく異なるため、駆動装置を全て電動に変える必要があり、多大な導入コストがネックとなっていた。
そこで大林組と慶應義塾大学は、油圧駆動制御に適したアルゴリズム(情報処理手順)を開発してシステム化した。このため、制御機構の追加や操作機器の改造などのわずかな作業を行うだけで、既存の油圧駆動式の重機に搭載でき、導入のための費用や準備期間が大幅に削減された。
このシステムにより、オペレーターの操作指示に基づき、重機がリアルタイムに駆動するとともに、対象物を正確につかめているか、また破損させてはいけない重量物を適切な力加減でつかみ持ち上げられているか、といった感覚を得ながら作業することが実現する。
大林組によると現在は、実験装置を用いた検証作業を行っている段階だという。今後は、システムを搭載した建設重機での実証実験を進めつつ、リアルハプティクスのメリットを最大限活用するため、オペレーターのインタフェースとして、アーム型指示装置の開発も行っていく。さらに、このシステムを使った熟練オペレーターの操作をデータ化することで、重機の自動運転化や若年技能労働者のトレーニングに活用していくとしている。
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