建設業の重篤災害をいかに回避できるか、西武建設と岩崎が開発した省スペース型VR安全教育:建設テック2018(2/2 ページ)
西武建設と岩崎は、VR(ヴァーチャルリアリティー)技術を活用した建設現場の安全教育システム「リアルハット」を開発し、2018年から本格的な販売展開を行っている。このVRコンテンツは、体験者が自ら危険性を気付くことに主眼が置かれている。現在は建設業の重篤災害をテーマにした3つのVR体験があるが、2018年度内にはさらに9つコンテンツを拡充するという。
歩行はコントローラーのみで操作、省スペースで体験が可能
リアルハットには、各種安全法令に基づいた、関教授と菊一代表の監修したオリジナルのシラバス(教材)が付属する。体験後に、効果的な安全教育の議論に役立てることができる。
岩崎の担当者は、「歩行動作はコントローラーで行い、実際に歩く必要はない。そのため、スペースの取れない場所でもVR体験が可能だ。実際に現場事務所の会議室で、新規入場者講習として常設されていたり、ゼネコンの安全大会で導入されている」。
他のVR安全教育との違いについては、「心に残る恐怖体験ではなく、どうすれば重篤災害を回避できるかに開発の主眼を置いた。体験者によっては、あまりに刺激の強いリアルな恐怖体験は、トラウマとなって、実際の現場に行くのが怖くなったり、仮想と現実の区別がつかずに、VRでは疑似だからと大胆な動きをすることもあるが、現実空間でも同様の行為をしてしまうかもしれない。その点を踏まえ、失敗体験を記憶に残すのではなく、最後は成功体験(回避)で終わらせるVRコンテンツを制作した。今後は2018年度内に新たに9つのコンテンツを作り、計12のコンテンツを展開していく」と説明した。
リアルハットのHMD(ヘッドマウントディスプレイ)は「HTC VIVE」。バックホウ編・足場編・クレーン編の3コンテンツを収録したコンテンツ本体の販売価格は30万円(税別)。HMDも含めた1週間・1カ月レンタルの他、出張イベントサポートにも対応している。
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