作業員数“9割”削減のプレキャスト化トンネル工法、実証実験で有用性確認し適用段階へ:トンネル新工法
鹿島建設は2018年10月15日、2017年に開発したトンネル構築時に構造物を完全にプレキャスト化する「スーパーリング工法」について、三井住友建設と共同で実物大のセグメントを使用した施工実験を行い、実際の工事で問題なく適用できることを実証したと公表した。
鹿島建設は、都市部の道路トンネルなどを開削工法で構築する際に、構造物を完全にプレキャスト化することでコンクリート打設や防水の工程が不要となる「スーパーリング工法」を2017年に開発。このほど、三井住友建設とともに、神奈川県大和市の鹿島機械技術センターの跡地で、実際に2車線の道路トンネル構築を行った。実験の結果、工法の実現性が確認されたことで、適用検討段階へと次のステップに進むことになる。
作業員数を9割削減、躯体構築の工程も半分に短縮
スーパーリング工法は、プレキャスト化により、鉄筋、型枠、コンクリート打設、防水などの作業が不要になるため、従来の場所打ちコンクリートによる施工と比較して、現場で必要な作業員数を約90%削減できる上、躯体構築の工程も約50%短縮できる画期的な工法。
都市部の開削トンネル工事は通常、場所打ちコンクリートによるボックスカルバートで構築するのが一般的だが、鉄筋、型枠、コンクリート打設、防水など複数の工程を必要とし、多くの作業員の投入と工期の長期化がネックとなっていた。この対策としてプレキャスト工法を検討した場合は、各部材が大きいため、大型のクレーンなどの揚重機械が必要となるが、都市部の限られたスペースでは重機自体を設置できず、一方で部材を小さくすると施工手間が増えるなどの課題があった。
実物大の施工実験では、まずシール材を貼付した8ピースのセグメントを地上の平らな場所で組み立ててPC鋼線で緊張し、リング状に一体化。このリングをクレーンで立て起こし、吊り上げて所定の位置に据え置く。次のリングを設置するために、水平ジャッキで1.2m(メートル)スライドさせる。これを4つのリングを連結させるまで繰り返す。4リングにPC鋼棒を挿入して一体化させ、最後に全体を1.7mスライドさせる。
今回の実験では、セグメントの地組(じぐみ)からスライドまで、各施工フローの実現性を検証するとともに、プレストレスによる一体化とシール材によって高い止水性が確保できることも併せてテストした。リング構築では、当初は4ピース分割を検討していたが、運搬なども考慮した経済合理性の観点から、今回は8ピースによる構築を採用している。
実験データによると、構造物の規模は2車線の道路トンネル構築を想定し、リングの外径12m、セグメント厚500mm(ミリ)、セグメント幅は1.0mとした。有用性が認められたのは、リング組み立て時の真円度で、平均精度1/4000となりほぼ真円となった。組み合わせによるズレ“目違い”は、2mm以下。クレーンによる立て起こし、立て置き時の応力度や目開き・変形は、事前予測の範囲内でセグメントのクラックや破損はなかった。スライド時の施工性は摩擦係数0.06でスムーズなスライドを確認した。継手部などの止水性は、水圧0.3MPa(メガパスカル)で3分間放置する試験において、漏水はなかった。
鹿島建設では、実験で所期の結果を得たことで、今後は工事の適用段階に移行して、さらなる改善に向けた検討も進めていく。
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