新居千秋氏が4室の茶室を配し、“糸”と照明色で日本建築のスケールと光を再現:OKAMURA Design Space R企画展(1/2 ページ)
オカムラデザインスペースRで、「建築家と建築以外の領域の表現者との協働」を基本コンセプトに毎年開催されてる企画展が第16回目を迎え、2018年10月17日まで開催されている。今展では、建築家・新居千秋氏(東京都市大学客員教授)を招き、「Somesthetic-身体性-」をテーマに作品を展開した。
オカムラのショールームの一画にある展示スペース「デザインスペースR」で、建築家と建築以外の領域の表現者との協働をコンセプトにした企画展が2018年10月17日までオカムラ ガーデンコートショールーム(東京都千代田区紀尾井町4-1)で開催されている。
企画展では、毎回1人の建築家(企画建築家)を選出し、「いま最も関心があって、挑戦してみたい空間・風景の創出」を依頼する。目指すのは建築家の個展ではなく、建築家と表現者(コラボレーター)が協働することで可能になる新しい空間・風景づくり。毎回、前年の12月に企画が立ち上がり、マンスリー・ミーティングを重ね、半年近く試行錯誤を重ねてオープニングの日を迎えるという。
4つの茶室を暗室に配置し、日本建築がもたらす身体性と光を再現
16回目の今回は、建築家・新居千秋氏を招き、若手アーティスト3人とコラボレーション。「Somesthetics-身体性-」をテーマに、人が持っているスケール感覚を体感できる場を構築した。会期中の2018年10月4日には、インスタレーションを解説するシンポジウム「Somesthetic−建築の身体性について−」を開催。OKAMURA Design Space R 企画実行委員会の委員長を務める川向正人氏(建築史家、建築評論家)と、新居氏を含めた製作に携わった4人で、トークセッションを繰り広げた。
参加アーティストは、美術作家・プログラマーの大原崇嘉氏をはじめ、絵画や映像に照明を組み合わせた作品を発表している古澤龍氏、色や形など基礎造形に関する研究を行っている柳川智之氏。いずれも、色や照明、形といったアプローチは違うが、視覚機能をテーマにした意欲的な作品を発表している。
今展でのインスタレーションでは、新居氏が「最も日本的であり、最も西洋的」とする4つの茶室を展示会場に配置。茶室はそれぞれ茶の湯の大成者、千利休、織田有楽斎、小堀遠州、古田織部の「待庵」「如庵」「八窓軒」「燕庵」を模している。
新居氏が設計で携わってきた建築物は、これまでに公共40件+ハウジング35件あるというが、一つとして同じスケールのものはない。椅子から万里の長城まで、さまざまな歴史的な建築物のスケールを総覧図として表してみると、日本のそれは独自の拡がりをみせ、6m(メートル)付近はバリエーションが多く、4km(キロ)のスケールになると、ほとんどの日本の歴史的建築物は表れず、この辺りが日本人の想像力の限界点だとした。
茶室には限られた空間に、茶の湯の所作やシークエンスが計算されており、日本のSomestheticsが凝縮されていると定義。1間(けん)は京間で1.91m、畳の長辺で大人1人が寝そべることができるスペース。これを人間の体に入り込んだスケール=“Somesthetics(サメステティック)/身体性”と捉えた。また、Somestheticsは、これまでの建築学で唱えられてきたScale+Proxemics(その他社会学、人間工学)+Dimension+Embodyment(宗教性をのぞく)≒間と、位置付けることもできる。
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