“10兆円企業”を目指す大和ハウス工業が成長基盤と位置付けるBIMへの取り組み:Autodesk University Japan 2018(5/5 ページ)
大和ハウス工業は、大成建設のBIM(Building Information Modeling)アプリケーション「T-REX」をカスタマイズし、自社の既存テンプレートから全面移行した。これにより、意匠・構造・設備がAutodesk Revitで連携する一気通貫の体制を整えることに成功している。最近の成果として、日本ERIの協力のもと、Revitで作成したBIMモデルによる建築確認申請を実現したという。
Autodesk BIM 360 Docsで日本ERIがペーパーレスで建築確認申請
伊藤 建築確認申請では、Autodesk BIM 360 Docsの機能により、日本ERIにはRevitデータで審査してもらうなど、確認申請の手順をペーパーレスで進めることが実現した。意匠だけでなく構造・設備モデルでも試み、手間のかかる構造計算の書類と申請図との整合性確保を、構造計算モデルと申請モデルの比較手法を確立し、効率化にも取り組んだ。
確認申請機関にとって、200枚にも上る構造計算書をチェックする作業は大変な労力となっている。そこで、構造計算と構造物のBIMモデルを比較することで、その違いが明確に分析できるようにした。設備についても、例えば屋外の受水槽をモデル化して、保有空間も可視化した。
伊藤 このようにBIM導入の効果は多岐にわたるが、組織全体としては「生産性向上」に注力していく。BIMに移行できない理由があるならば、そのハードルを全てクリアにしなければならない。協力・外注業者にも導入を促し、しっかりとしたサポート体制も敷く必要もあるだろう。その過程で、最後に残るのは“変える”という気持ちだけになる。BIMはCADと異なり、会社の仕組みや業務の在り方を変えるため、トップの決断も絶対に不可欠。部分的なBIM導入では、ほとんど効果が望めないと考えている。
伊藤 生産性の効果について述べると、先ほどプロセス改善の一例に挙げた確認申請が効果が最も目に見えて分かるだろう。クラウドで進めることで、3000枚印刷していたものが300枚に減らせる。概算で4万円ほどの削減になる。たかだか4万円と言っても、当社で年間1500件をこなすことを考えると6000万円の波及効果につながる。こういったものの積み上げが大きな利益へと変わっていく。
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