ドローンで“台風21号”による公共施設の被災状況を点検、飛行プラン策定に天気予報システム活用:災害×新技術
大阪府泉南市で2018年9月19〜21日、E・C・R一級建築士事務所がドローンを使用し、公共施設の点検撮影を行った。泉南市と同事務所が2018年4月6日に締結した「災害時における支援協力に関する協定書」に基づくもので、期間の決定には同社がサービス提供するドローン向けの天気予報システム「Dro天(どろてん)」が活用された。
E・C・R一級建築士事務所は、2018年9月19〜21日の期間、台風21号の被害状況について、ドローンを使用して泉南市の公共施設9カ所の点検撮影を実施した。
ドローン向け天気予報システムでフライトプランを決定
点検撮影に使用されたドローンは、「Inspire 2」「Phantom 4 Pro」「Inspire 1」のDJI社3機種で合計3機が投入された。台風21号の被害状況について、市の各部署から状況確認支援の依頼を受けた危機管理課が、2018年4月に市と締結した「災害時における支援協力に関する協定書」に基づき市内の被害状況確認のためにドローン空撮を依頼した。
市の「中部ポンプ場」鋼板屋根の剥離状況や「旧鳴滝第一小学校体育館」の軒先破損状況をはじめ、計9カ所の公共施設(中部ポンプ場、旧鳴滝第一小学校、雄信小学校、樽井公民館、図書館、文化ホール、若松湯、市民体育館、樽井小学校講堂)を点検した。
ドローン飛行では、台風が過ぎた後も天候が不安定だったため、ドローンを使った撮影期間の決定には、E・C・R一級建築士事務所がサービス提供しているドローン向け天気予報システム「Dro天」が活用された。
Dro天は、E・C・R一級建築士事務所と気象工学研究所が協力して開発したドローン向け天気予報システム。Dro天のサイト上で、全国61地点を対象に33日先まで総合判定して、日々のドローンに適した飛行条件を10段階で表示する。
ドローンの飛行は、豪雨や強風の中では飛行できないため、飛行当日の天気は安全な飛行を行うには重要とされる。Dro天により、雨や風の影響をできるだけ避けて飛行予定日を決めることができるようになる。
Dro天の表示画面はカレンダースタイルで、各日の総合判定が10段階で表示され、数字が小さいほど好条件であることを示す。各日の枠内には「雨」と「風」それぞれ、過去と予報の情報を独立させて表示し、「雨」や「風」のどちらか一方を重視して日程を決めることも可能だ。
予報システムは毎週木曜日に更新され、PCやスマホから無料で確認できるが、利用に際しては事前登録が必要。2018年4月26日のリリース以降、同年6月14日には情報更新の頻度を高めるなどのバージョンアップを行った。
航空局に対して行うドローンの飛行許可申請は、手続きに通常2週間ほどの期間が必要なため、気象庁が発表する週間予報では先の天気を見込んだ飛行予定日を決めることができずにいたのが課題だった。
Dro天の33日先までの全国の天気予報を把握できるこのシステムにより、1週間を超える先のドローンのフライトプランを立てることができるようになり、より安全なドローン点検が実現する。
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