竹中工務店の設計・施工で海外初の免震建物、ブリヂストン社「高減衰免震ゴム」を51基設置:耐震・制震・免震
竹中工務店は、海外プロジェクトで設計・施工を手掛けた初の免震建物が完成した。建築物はブリヂストングループのインドネシア・カラワン工場の新事務所棟。
竹中工務店は、インドネシアのカラワン工場の新事務所棟で、「中間階免震構造(柱頭免震)」を適用した。同社が設計・施工を手掛けた案件で、初の免震建築物となる。
積層ゴムで構成したブリヂストン社製の高減衰免震ゴムを51基設置
今回免震構造を導入したのは、ブリヂストングループのインドネシア・カラワン工場の新事務所棟(PT. Bridgestone Tire Indonesiaカラワン工場 新事務所棟)。工場は、日系企業が多く進出するカラワン・スルヤチプタ工業団地の一角に位置し、約37万m2にも及ぶ広大なタイヤ工場に点在する管理事務所と本社機能を新事務所棟として集約した。他にも食堂棟やスポーツセンター棟など10棟も建設した。
通常はデッドスペースとなる免震層を駐車スペースとして有効利用するが、限られた敷地で従業員や来客の駐車スペースを確保したいというニーズに応えるべく、地下1階の駐車場スペースの柱に、免震ゴムを設置する中間階免震構造を採用。地震エネルギーを吸収するダンパーが不要となる減衰性の高い積層ゴムで構成されたブリヂストン社製の「高減衰免震ゴム」を51基設置した。
施工では、免震ゴムを地下1階の柱の頂部に設けることで、地震時に上部構造が動いた際にも、車や周囲の人に衝突しない様に配慮した。
新事務所棟の構造は、RC造(一部S・SRC造)で地下1階・地上3階で、延べ床面積7744m2(平方メートル)。工期は2016年10月〜2017年10月。建築主はBridgestone Tire Indonesia。
一般的に免震建物の施工においては、免震ゴム取付部の施工精度やコンクリート充てん性の確保が重要といわれる。そのため今回は、現地の施工環境に合わせた最適な材料・工法の選定を行い、現地協力会社とのタイアップによる試験施工を繰り返し、鋼製型枠の利用やサイトPCa工法などで、高い施工品質の確保と施工の効率化を実現した。
インドネシアをはじめとする海外の地震多発地域では、持続的な経済・社会発展のための防災が大きな課題となっている。竹中工務店では、そこに日本の免震技術を持ち込み、現地の条件に合わせた合理的な設計と、高い施工品質の総合的なエンジニアリング力を生かして、今回のプロジェクトがグローバル展開の足掛かりとなることを見込んでいる。
免震化した事務所棟のエントランスには、ブリヂストン社製の免震ゴムのショーケースも配置した。ブランドイメージをシンボリックに扱う設計コンセプトをタイヤにちなんで”GRIP ON SYMBOLISM”と名付け、建物全体への意匠にも反映させている。
日本には戸建住宅を除く免震建築物が約4100棟(2015年末)あるとされ、その中でも竹中工務店はトップレベルのプロジェクト実績を誇る。これまでにも、日系企業の海外拠点に対する既存建物の耐震診断や東南アジア、トルコなどで現地の大学や建設関連会社に向けた日本の地震防災に関する技術セミナーを実施してきた。今後も、日系・非日系のユーザーに対し、耐震・免震技術を生かした建物受注の強化を図るとともに、グローバル規模で建物の安全性向上に貢献していくとしている。
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