鉄骨梁の仮ボルトを不要とする接合治具「ガチャピン」を新開発、戸田建設
戸田建設は、新設計の仮ボルト不要接合治具「ガチャピン」により、鉄骨柱と梁(はり)の仮接合を専用ピンの差し込みだけで可能とした。従来、鉄骨建方で不可欠とされた長時間にわたる鳶工の高所作業を大幅に低減。鉄骨工事の作業効率と安全性を向上する。
戸田建設は2018年9月25日、鉄骨梁の仮ボルトを不要とする新たな接合工法を開発したと発表した。
仮ボルト不要接合治具「ガチャピン」を用い、鉄骨柱と梁を簡単に仮接合
新工法は、仮ボルト不要接合治具「ガチャピン」(商標登録出願中)により鉄骨柱と梁を簡単に仮接合するもので、鉄骨工事の作業効率と安全性の向上が見込める。従来の鉄骨工事では鉄骨柱と梁を接合する際、仮ボルトを取り付けた後に本締め用のボルトで固定するため、仮ボルトの取付・締付・撤去に多くの手間がかかっていた。
新工法の具体的な手順は、あらかじめ地上で鉄骨梁の上フランジにスプライスプレート(添え板)とガチャピンを「ネジ付ピン」で固定。その鉄骨梁に取り付けたガチャピンの「接合ピン」を、柱側接合部にあたる上フランジのボルト穴に上から差し込むような流れ。
この「接合ピン」が、せん断応力により、風や地震で生じる水平力に抵抗する。梁や柱に上向きの力が働いてもピンが抜けないよう「外れ止め」も設置。さまざまな外力に対して、接合ピンと外れ止めが抵抗し、梁が落下しないことを動的加力実験で確認済みであるという。「建築工事標準仕様書JASS〈6〉鉄骨工事」に準拠。
新工法の開発により、従来の仮ボルトによる仮固定に比べ、取付・締付・撤去における作業効率の向上が図れるほか、長時間にわたる高所作業で鳶工が墜落するようなリスクも回避、仮ボルトが落下して下部の作業員などに激突する恐れもなくなる。
同社によると、2017年に開発したタワークレーンなどによる揚重作業を効率化する「積荷旋回制御装置」と組み合わせることで、鉄骨柱と梁の接合に要する時間を従来の約1/3に短縮できることも実際の現場で確認済み。
今後については、「新工法を標準化し、鉄骨造の建築現場に広く展開するとともに、引き続き鉄骨建方の自動化を目指して新技術の開発に注力していく」としている。
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