“KAPシステム”と“Revit”の一体化、鉄骨の建築生産プロセスをリアルタイム共有:Autodesk University Japan 2018(2/2 ページ)
清水建設は、鉄骨構造物専用CAD「KAPシステム」の活用により、年間の鉄骨使用量の事前割り出しを高い精度で実現している。自社でKAPシステムの強化も図り、BIMソフトウェア「Autodesk Revit」と一体化することで、鉄骨に関わる全関係者とリアルタイムでの情報共有も達成した。
KAPシステムとRevitが融合した鉄骨構造物専用BIMシステム
三戸 KAPシステムは、ゼネコン大手5社が施工するほとんどの鉄骨に対応し、3000を越える部品を網羅することで、複雑な鉄骨も扱える。プレートを組み合わせれば、新しい部品すら作ることも可能。既に工場管理や建方管理に必要な仕組みも内蔵している。
一番のポイントは、入力データを自動で計算し、アウトプットして詳細な鉄骨モデルを作成する点で、10万本クラスの建物もモデル化できる。また当社では、年間で使用する40万トンのうち半数以上にあたる25万トンは、事前にKAPシステムで数量を算出している。この数量を正確に出せるCADシステムはいまのところ他にはない。
問題は、鉄骨の設計が進むにつれて構造モデルが次第に変わっていくこと。その最新の数量が欲しい場合、もう一度KAPシステムに構造データを1から打ち直すのは非常に手間で、システム上で修正をかけるような方法をとらなければならない。手作業が入ることにより、そのデータが本当に正しいのか、印刷して確認する必要も生じてしまう。
三戸 そこで、入力情報を残しつつ変更にも追随できるよう、BIMソフトウェア「Autodesk Revit」にさまざまな情報を打ち込むことで、正確な管理が行えるのではと考えた。データのバトンタッチではなくリアルタイムの最新情報をRevit上で見れる環境とすべく、KAPシステムの機能をRevitに融合した鉄骨構造物専用BIMシステム「KAP for Revit」の開発に至った。
ここまで拘る理由としては、“ワンデータ”の作業環境で動作する鉄骨専用CAD、そして“リアルタイムで鉄骨の詳細検討”を実現したかったからだ。これにより、外装・昇降機・設備など鉄骨に関わる全関係者が、最新のワンデータを共有できる。従来のように、メールの容量オーバーでIFCデータなどを外部のファイル転送サービスから送付する必要も生じない。
三戸 KAP for Revitの機能としては、各ゼネコンや設計事務所の基本的な構造仕様などをあらかじめ登録可能にしている。建物別の使用部材も同様だ。この設定をもとに、原寸での詳細検討や数量の割り出しを行う。図面は、各方面の業者に必要なものを網羅。数量表には、現場溶接・工場溶接、部材の本数はハイテンションボルトの数まで明細と集計を自動で算出する。最大のポイントは概算段階でも、ほぼ正確な数量を割り出すことが可能な点が挙げられる。現在先行して提供中のトライアルβ版には付帯していないが、製品化までには、KAPシステムが過去データをもとに自動生成される鉄骨部材の領域をさらに広げていく予定だ。
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