画像処理・超音波・水圧の“危機管理型水位計”を開発、多様な環境の河川管理に対応:ICT河川管理
パシフィックコンサルタンツは、「画像処理式」「超音波式」「水圧式」の3タイプの危機管理型水位計を開発した。導入を進めている全国の自治体へ、それぞれのニーズにマッチした機材を提供していく。
パシフィックコンサルタンツは、全国の河川で設置が進められている河川の水位を計測する危機管理型水位計で、多様なニーズに応じられる「画像処理式」「超音波式」「水圧式」の3タイプを開発した。
接触型で水圧式、非接触型で画像処理式と超音波式を開発
危機管理型水位計は、国土交通省 水管理・国土保全局が河川管理および災害対応の高度化を目的とした「革新的河川技術プロジェクト」の第1弾で、建設業者やIT企業、コンサルタントなどの民間企業に技術公募した機器。
技術仕様では、1台あたりの設置コストが100万円以下であること、クラウドと連携して平常時は1時間毎、降雨時には5分毎にデータを送信すること、無給電で5年以上稼働することなどの諸条件が求められていた。
パシフィックコンサルタンツは、アラソフトウエア、クレアリンクテクノロジー、情報通信研究機構の3者と共同でプロジェクトに参加。2017年8月から、横浜市の鳥山川で、画像処理式の危機管理型水位計を設置して実証実験を行った。
河川水位を測る方法は、「接触型」「非接触型」の2種類があり、水位計を設置する場所の条件や設置者のニーズにより選択される。開発にあたっては、地方自治体のさまざまなニーズに対応できるように、接触型で水圧式1種類、非接触型で画像処理式と超音波式の2種類の計3タイプを開発した。
画像処理型「eye-Box」は、カメラを搭載し、水位計側と計測時の映像を両方取得。設置は既存電柱などの既設マストへの固定、または専用架台に取り付けるだけで済む。センサーを河道内に入れないため、塵芥(じんかい)や流木などによる破損リスクを気にする必要がない。
水位の読み取りは、独自の「ヴァーチャル量水標」を採用。撮影された画像にAR技術で量水標を表示させ、水面の高さ位置を示す。画像はPCやモバイル端末で確認することができる。夜間時には、カメラを格納しているカメラハウジング内に出力10W(ワット)の赤外光4灯を備えているため、約40m(メートル)の夜間撮影距離を確保して観測する。
水圧式の「PCH-01」は、センサー部と、通信制御・二次電池を内蔵した本体部および太陽光発電パネルで構成。水位計測とLTEによるデータ無線送信は、5Wの太陽光発電パネルと6.6Ahの二次電池で駆動する。二次電池は、高性能なリン酸鉄リチウムイオン二次電池を用いることで、9日間の無日照後でも150回以上の観測ができたという。
センサー部分は、樹脂で密封保護された小型センサー。本体側にも圧力センサーを搭載しているため、ケーブルの小径軽量化を実現した。付属の標準ケーブルは長さ30mで、護岸や堤防にケーブルを沿わせて設置することができる。
超音波式の「PCH-02」は、水圧式と共通の本体と太陽光パネルを使用。超音波センサーは、英国Pulsar Process Measurement社のdBi10型。センサーハウジング内には、温度センサーが内蔵され、周辺気温の変化による補正を自動で行うため、正確で安定的な水位計測が可能になる。
センサーの計測レンジは標準で10mほどだが、長距離センサーに変更することで、20m以上の射程に延長させることもでき、高さのある渓谷などでの水位計測にも対応する。
パシフィックコンサルタンツによると、既に試作機による現地試験を終え、現在は量産型の製造を進めているという。今後は、地方自治体へ直接提供や危機管理型水位計の設置工事業者へ機材提供していく。
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