土砂災害の復旧準備を最短化、“西日本豪雨”の被災地を「UAVレーザー測量」で調査するテラドローンに聞く:災害×新技術(2/2 ページ)
日本列島を立て続けに襲う大雨と地震。これに伴い甚大な被害をもたらすのが、土砂崩れ・地すべりなどの「土砂災害」だが、その災害状況の計測も2次災害のリスクから困難を極める。そこで、現在活躍の場を広げているのが「UAVレーザー測量」である。最短で即日にフライト計測し、中一日で測量精度1/500に基づく地形データの提出が可能だ。“西日本豪雨”の土砂災害状況を調査するテラドローンの関隆史、河越賛の両氏に話を聞いた。
UAVでの測量実績は600回を超える
――テラドローンのUAVレーザー測量とは
当社は、完全自律型のUAVを採用し、起伏の激しい山間部などでも、オペレーターの技能に左右されない飛行としている。その機体には、画像撮影用のデジタルカメラと測量用のレーザースキャナーを装備。
レーザー測量は地上に向けてレーザー光を発射し、その反射波から地上までの距離を求めることから、機体の正確な位置情報を把握すべくGPSとIMU(慣性計測装置)も搭載している。これにより、膨大かつ詳細な解析結果を取得し、正確な3次元点群データと等高線マップを作成することができる。
特徴として、計測の依頼を受けてから早ければ即日対応が可能で、被災地ならUAVの活用で2次被害を防げるなど安全性の確保も図れる。従来に増して、精度の高い計測結果を割り出せる点も強みに挙げられる。
ヘリコプターなどによる航空測量と比較しても、天候に左右されない利点がある他、コストも最大で1/10に抑えることが可能だ。
――テラドローンの企業優位性
当社は2016年2月の設立より、業界に先んじてICTによる計測・測量を主力に事業展開し、UAVでの測量実績は600回を超えるなどノウハウを蓄積してきた。レーザー測量の機材は、いまだ平均3000万円ほどと高額ではあるものの、現時点で4つの機材を自社で保有している。
近ごろは、UAV自体やレーザー機材などのハード部分の研究開発も進めており、コストダウンを図った独自製品の市場提供も視野に入れている。事業拠点は東京本社をはじめ、東北・中部・中国・九州・北海道に7支社を全国に構え、さまざまな案件へ迅速に対応可能な体制を敷いている。
――さらなるUAVレーザー測量の高度化に必要なこと
改善できる点として、UAVの長距離飛行が挙げられる。現行のマルチコプターでは20分程度、2.4GHz帯通信は最大で2km(キロ)程度のフライトが限界で、遮蔽(しゃへい)物があると電波が届かなくなってしまう。
これが、SIMカードをUAVに差し込んで飛行できるようになれば、フライトの距離を大きく伸ばせるほか、計測データも空中からリアルタイムで取得可能になる。国の認可が下り次第、SIMに移行できるよう準備を進めていきたいと考えている。
――熊本地震の復旧工事での採用内容は
復旧工事の続く熊本では先日、熊本県発注工事で初のUAVを活用したICT施工となる「高野台災害関連緊急地すべり対策(土木)工事」の起工測量でUAVレーザー測量を実施した。ここでは、約13ha(ヘクタール)にわたる崩壊した斜面の測量を15分のフライトで完了し、高精度な地表面データの取得に成功している。
測量現場は、熊本地震で広範囲に地すべりが起きた斜面で、大量の倒木・草木で溢れていた。施主の藤本・杉本・熊阿復旧・復興建設工事共同企業体からは、従来の計測のように倒木などを除去する必要もなく、安全かつ短時間で詳細な情報が得られた、と評価いただいている。今回を皮切りに、熊本の復旧工事でもUAV測量が積極的に活用されていくであろう。
――次は北海道地震の現地調査へ
継続調査中である西日本豪雨の土砂災害状況の洗い出しを速やかに進めていくとともに、9月に発生した北海道胆振東部地震の現地調査にも、人命救助のめどが立ち次第現場に入り、一刻も早い復旧に寄与できるよう全力で取り組んでいきたいと考えている。
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