国交省が検討している河川・港湾のドローン点検の課題と将来像:第2回ドローン×インフラメンテナンス連続セミナー(1)(3/3 ページ)
インフラメンテナンス国民会議は2018年9月14日、第2回となる「ドローン×インフラメンテナンス」連続セミナーを東京・千代田区の中央合同庁舎で開催した。2018年5月の初開催に次ぐ2回目の今回は、ドローン技術のニーズとシーズのマッチングに向けた自治体の取り組みと課題の共有、会員企業の製品やサービスを紹介した。
点検AIの技術開発を目標に
国交省のドローン点検の推進施策としては、公共事業企画調整課 課長補佐・近藤弘嗣氏が解説。2014年度の公募でドローンを含めた「社会インフラ用ロボット現場検証委」による技術検証に沿って、現在では飛行型4技術をはじめ、7技術について試行的導入の検証結果を整理している。
社会インフラ用のロボット実装に向けた今後の展開では、新技術活用システム(NETIS)テーマ設定型で、技術が採用しやすい環境を創出する。2018年8月24日には、点検記録作成支援ロボットの「評価指標」を明らかにして技術公募を既に開始している。今後は、これを踏まえて、公共事業での新技術導入を後押しする「新技術導入促進調査経費」を活用し、NETISで性能確認した技術について、2018年度内に定期点検の現場で試行する。
2018年度は、トンネル・橋梁(きょうりょう)の定期点検(各10業務程度)で従来点検の実施に合わせ、点検受注者により実施する。具体的には、ドローンによる画像取得と、作成した3Dモデル上の正確な位置に、写真と診断結果を蓄積し、経年変化の把握を容易に実現させることを試行する。写真に3次元座標があれば5年後の比較がスケッチではなく写真で行える。
その先には、点検AIの技術開発を目標に据える。国交省では、人の作業の支援ではなく、人の判断の支援を生産性向上のカギと見ている。このために土木技術者の正しい判断を蓄積した「教師データ」の提供をはじめ、開発されたAIの評価を通じて、民間のAI開発を促進するとともに、技術開発成果を活用できる環境整備に取り組む。大量の「教師データ」の整備、民間のAI開発者への提供と、AIの性能評価を行う仕組みとして「AI開発支援プラットフォーム」の運営を計画している。このプラットフォームでは、点検成果が蓄積され、再学習に活用される仕組みとなる見通しだ。
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