CLTを“現し”の構造部材に利用できる「CLT+鉄骨ハイブリッド構造」を開発、「兵庫県林業会館」に初適用
竹中工務店は、直交集成板(CLT:Cross Laminated Timber)と鉄骨フレームを組み合わせた工法を開発し、2018年7月25日に5階建ての兵庫県林業会館建て替え工事に初導入した。この工法であれば、中大規模の耐火建築物でCLTの構造部材としての活用や木造の大スパン建築が実現し、木材の利用促進につながる。
竹中工務店は、都市部での耐火建築物にCLTを通常は隠蔽してしまう構造部分を露出させる“現し”の部材として利用できる「CLT+鉄骨ハイブリッド構造」を開発し、神戸市中央区で建設を進めている「兵庫県林業会館建替工事」に初適用した。
CLT耐震壁を鉄骨フレームで拘束、超高層にも導入可
CLT+鉄骨ハイブリッド構造は、鉛直力を支持する鉄骨の柱・梁(はり)フレームと、水平力に抵抗するCLT耐震壁で構成。CLT耐震壁を鉄骨フレームで拘束することにより、木がもつ材料強度を効率よく引き出すことができる。また、一般的な鉄骨造の建物にもブレースと同様の耐震要素として幅広く導入することも可能で、超高層の建築にも適用できるという。
これまで、都市部での中高層の耐火建築物でCLTを構造部材として採用することや、木を“現し”で使用することは非常に困難とされていた。
CLT+鉄骨ハイブリッド構造は、火災時に鉄骨のみで建物を支えることでこれらを可能とし、都市部での木材利用を促進する新たな構造システム。梁を鉄骨とすることで、一般的な木造建築では難しい大スパンが実現し、オフィス、店舗、学校など多様な建物用途での活用が見込まれる。
CLT耐震壁は万一の火災や地震時に損傷した後でも、取り替えが可能な接合方法。床にもCLTを用いることで木材の使用量が増え、さらに環境に配慮することができるとともに、建物全体が軽量化され、基礎工事の軽減や耐震性能の向上にもつながる。
実物大の耐火性能の確認実験では、床を含めたCLT+鉄骨ハイブリッド構造をテストし、1時間の耐火性能を有することが確認された。
CLT+鉄骨ハイブリッド構造を初適用した「兵庫県林業会館建替工事」は、2018年3月1日に着工し、7月25日からCLTの建方工事を開始した。施主は兵庫県森林組合連合会、兵庫県木材業協同組合連合会、兵庫県治山林道協会、兵庫県林業種苗協同組合。建設場所は兵庫県神戸市中央区北長狭通5丁目5番18。規模は地上5階(塔屋1階)建て、延べ床面積は1567m2(平方メートル)。設計は竹中工務店、施工は竹中工務店・大和ハウス工業JV(特定建設工事共同企業体)。竣工は2019年1月15日の予定。
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