2019年2月からの義務化に先立ち、スリーエム ジャパン本社で国内向けモデルなど初の“フルハーネス”体験会:フルハーネス着用義務化(2/2 ページ)
2019年2月から建設業界でも5m以上の高所作業でフルハーネス安全帯(墜落制止用器具)の着用義務化が始まる。グローバル市場でフルハーネス安全帯を販売しているスリーエム ジャパンは、フルハーネスの製品ラインアップ紹介と吊(つ)り下がり体験会を都内で行った。
鳶職などのユーザーにヒアリングして日本仕様を開発
3Mのハーネス製品紹介では、安全衛生製品事業部 マーケティング部 マネジャー・下山和哉氏が、製品を着用したモデルを前に各部位の仕様を説明した。ラインアップはハイエンド「3M DBI-サラ エグゾフィットネックス ハーネス型安全帯」、日本仕様「3M DBI-サラ エグゾフィット ライト ハーネス型安全帯」、ベーシック「3M プロテクタ ハーネス型安全帯」の3タイプ。いずれも米国・欧州基準をベースとした安全性能で、背面X型ベルトや金属製バックルで吊り下げ時に脱げない、骨盤サポートベルトで股間に荷重が集中しない、可動式胸ベルトやバックD環での位置調整で首が締まらないなどの特長がある。価格は欧州で人気のベーシックが1万円前後、米国の建設業界で支持されているハイエンドが5万円前後の価格設定。
下山氏は「日本ではX型はY型に比べ、道具ベルトを使いづらいなどの理由で人気が低いが、腰位置のベルト交差部を縫い付けずに可動式にしているため、道具ベルトとの併用を可能にした。X型は体にフィットし、作業性が格段に良く、股の部分に余裕ももたせているので、しゃがんでも食い込むことがない。さらにハイエンドモデルは標準で、万一落下して吊り下がった際に股部のうっ血を防ぐストラップを装備している」と製品の優位性を語った。
国内向けモデルについては、「鳶(とび)職にヒアリングをして、彼らのニーズをくみ取って開発にあたり、調整方式がシンプル構造の“パラシュート式”とベルトの端を巻き取る“ダイヤル式”の2種類を用意した。素材には、体によりフィットさせるため、柔らかいベルトを採用、カラーも人気の黒とした」。
ディスカッション後には、会場に設置された大型の3脚で、実際に各ハーネスを着用して吊り下がり体験を行った。参加者は、日常的に使用している安全帯も持ち込み、自分の手持ちのハーネスとの違いを体感。落下後に静止した状態で、どの様に荷重がかかるかを実体験し、ハイエンドモデル以外でもオプションで追加できる“うっ血防止ストラップ”の使い方を学んだ。
体験者からは「胸のバックルがしゃがんだ際に首元まで上がってくることがなく圧迫感がない」「骨盤サポート構造で、股に食い込まないのが良い」「胸のバックルがプラスチックだと負荷がかかった際に壊れるが、頑丈な金属バックルながらもカチッとはめやすい」といった声が挙がり、とくにハイエンドモデルが人気を集めた。
会場では、フルハーネス以外にも、ランヤードやマグネット式で道具がくっつく道具入れ、マジックテープの貼る位置を変えるだけで簡単には開かなくなる道具袋などの3Mの建設用製品群を展示した。
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