東急建設が進めるVR技術を駆使した安全衛生教育と建設業の魅力発信。企画・開発に携わった伊藤誠氏に聞く:建設×VR/AR/MR(3/3 ページ)
東急建設は、VR体験型の安全衛生教育システム「Tc-VOW(ティーシーバウ)」を開発し、建設業における3大労働災害を想定したコンテンツ制作を進めている。現在、サービスを行っている「墜落・転落災害」のVRコンテンツは、同社の協力会社も含め、これまでに作業員延べ150人以上が体験した。Tc-VOWとはどういうものか、建設業にVRを取り入れた意図、次の展開に位置付けるVR/AR技術を活用した建設業の魅力発信など、企画・開発に携わった東急建設 伊藤誠氏に聞いた。
ケーソン工事に続き、山岳トンネル工事のコンテンツ配信も
――一般層に向けたVR技術によるスマホアプリとは
伊藤 工事現場は、安全面から作業員以外が立ち入ることは難しく、見学するような機会も少ない。そこで、リコーの360度カメラ「RICOH THETA(リコーシータ)」で現場映像を撮影し、工事が進む過程を簡易ゴーグルで視聴できるサービスも試みている。施主や周辺住民に対する説明、社員教育などに役立てている他、学生に向けた建設業の魅力発信にも活用している。
2018年6月には、VR技術を用いたスマートフォン用アプリ「新入社員の1日VR」の一般への提供を開始した。これは、建設現場の施工管理業務を疑似体験できるもので、体験者は測量の業務に携われるなど、具体的な仕事内容を一日の流れに沿って体験可能とし、学生や一般の方にも分かりやすい構成を目指した。
これに加え、雨水や汚水を吸揚し、送水・放流するポンプ所築造の施工現場をVRで体感する「業平橋ポンプ所 ケーソン工事」のバージョンも公開している。いずれのアプリも無料で提供しており、市販のVRゴーグルを使って体験可能なほか、ゴーグルがなくてもスマートフォンと簡易HDMさえあれば、360度映像を視聴することができる。近く、山岳トンネル工事のコンテンツも配信する予定だ。
――今後のコンテンツ開発
伊藤 建設業の三大災害である「墜落・転落災害」「建設機械・クレーン等災害」「倒壊・崩壊災害」のそれぞれのコンテンツは取りそろえたいと企画している。既に、建設機械・クレーン等災害は2018年5月に完成。内容は、定格荷重をオーバーしたクレーンが倒れてくるシーンなどで構成し、重機周辺で働く作業員の注意喚起を促すようなものになっている。残りの倒壊・崩壊災害に関しては、ビルの床を工事する際に下の支えが足りず崩れてしまうケースなどを想定している。
引き続き、コンテンツの充実化を図り、建設現場の作業員や協力会社の安全衛生教育へ展開、安全意識を喚起していくことで、“災害事故ゼロ”へ寄与していきたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- VRでお悩み解決体験も、三菱ビルテクノがショールーム刷新
三菱ビルテクノサービスが本社のショールームを刷新。「見て、触れて、実感できる」をコンセプトにした施設で、VRを活用したファシリティマネジメントの体験コーナーなども用意した。 - 清水建設・戸田建設が監修した死の危険を感じるVR研修。開発した積木製作に聞く
積木製作は2018年6月7日、VR(バーチャルリアリティー)技術を活用した訓練、研修コンテンツ「安全体感VRトレーニング」の建設現場シリーズを発売した。VR研修とはどういうものか、なぜVRなのか、積木製作セールスディビジョン シニアディレクターの関根健太氏に聞いた。 - 建設重機に着脱可能な遠隔操作装置を開発、フジタ
フジタは、バックホウなどの建設重機を遠隔操作できる装置「ロボQS」を開発。汎用の油圧ショベルに現場で装着できる遠隔操作装置で、災害時の土砂崩れなど、人の立ち入りが危険視される現場で威力を発揮する。2018年7月18〜20日に東京ビッグサイトで開催されたメンテナンス・レジリエンスTOKYO 2018内の「i-Construction推進展2018」で、土工の建設現場をVR化して、実演デモを行った。 - 設計図面を建設現場に実寸投影する「MR」技術、Microsoft HoloLensを活用
インフォマティクスが提案するMR(複合現実)技術は、設計図面を建設現場に3次元で投影する方法。ヘッドマウントディスプレイは、PCやコードを必要としないMicrosoftの「HoloLens」を採用している。高センサーを搭載しているため、自分が動き回っても、図面がズレることが無い。